一方、32歳で結婚したヒトミさん(35歳)は、夫となった彼と「大恋愛」だったそう。彼のことが大好きで、とにかく結婚したいと自分から迫った。
「一緒にいたかったんです。彼はフリーランスで仕事をしていて、誰にでも愛想がよくて女性が大好き。それがわかっていたから、私だけを見てほしくて結婚という言葉を持ち出したんです」

3年ほどつきあって彼が“根負け”した形で結婚した。ところがいざ結婚してみると、彼は意外とまじめで、家庭という形にこだわった。結婚したら夫と妻、夫である自分は一家の大黒柱で、妻はそんな夫を支えるべき、そして子どもは3人ほしい、と新婚旅行先でいきなり言われた。
「私は何も考えていませんでした。うちは離婚家庭だったし、母親がときどきわけのわからない男を引っ張り込んできて嫌な思いもしたし、子どもがほしいと思ったこともなかった。
私は彼と一緒にいたいだけで、家族を作りたいわけではなかったんだと自分の気持ちに気づきました」
彼はヒトミさんが仕事をするのもいい顔をしなかったが、かといって彼自身が何不自由なく生活できるほど稼いでいるわけでもない。必然的にヒトミさんは仕事を続け、家事もひとりでこなしていた。
なんだか違うと思いながらも、離婚という決断ができずにいたが、夫がいよいよ「子ども作ろうよ」と言い出したので、逃げるように家を出たという。
「それまでも子どもができるのが怖くて、彼とはほとんど性的な関係を結んでいないんです。でもさすがにもう逃げられないと思ったので家出しました」

ただ、彼は離婚に応じてはくれないため、今も婚姻関係は継続中だ。彼女は弁護士をたてて協議しようと思っているが、彼は離婚しないの一点張り。そろそろ調停を申し立てることも考えているという。
「彼には申し訳ないという気持ちがありますが、やはり結婚そのものと子どもをもつことは私にとっては違うものだった。それをわかってほしいと思っています」
恋愛、結婚、出産。今の時代、一連のものとしてつながることもあるが、それぞれを独立したものとする考え方もあるのかもしれない。結婚前にすりあわせができず、結婚後に気持ちに乖離があるとわかったら結婚を解消するのもひとつの方法である。生き方が違うのだから。
<文/亀山早苗>
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