「ダメなまま許される世界に」ゲイ作家もちぎさんの温かさに泣き笑い
私たちは年齢やライフスタイルの変化に伴い、自分らしく生きられない苦しみを抱えることもあるもの。そんな生きずらさに寄り添い、世間一般が求める「普通」でなくてもいいと肯定してくれるのが昨年、強烈な作家デビューを飾ったゲイ作家のもちぎさんです。
もちぎさんはゲイであることや過去をさらけ出し、多くの人々に笑いと勇気を届けている作家さん。処女作であるコミックエッセイ『ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。』(KADOKAWA)に描かれた“ゲイ風俗”の現実は「性」について考えるきっかけを与えてくれ、第2作目の『あたいと他の愛』(文藝春秋)に綴られていた毒な母親との壮絶な日々も大きな話題に。この作品は完全なるエッセイであったからこそ、もちぎさんの想いがダイレクト伝わってきました。
そんなもちぎさんがこの度、新作『ゲイバーのもちぎさん』(講談社)を発刊。本作は、ゲイバー「ジーニアス」での勤務経験をもとにしたコミックエッセイ。18歳で毒親と決別し、上京したもちぎさんは身体を売って大学へ行き、就職。しかし、会社でセクシュアリティをアウティングされ、再びゲイ風俗へ戻ることに……。
心身共にボロボロになってしまった時、足を踏み入れることになったのが、ゲイバーという世界。本作に登場するしっかりもののママや個性の強い従業員たちとのやりとりに読者は泣き笑い。作中に出てくるもちぎさんの深イイ言葉は生き迷う心に染み入ります。
今回は、生きづらさをコミカルに描き続けるもちぎさんに自分らしく生きるため処世術を聞きました。
――この度は新作の発売、おめでとうございます。まず、本作に込めた想いを聞かせてください。
もちぎさん:「ダメなまま許される世界を作っていく」ということです。最近は失敗を、敗北者を、挫折を、苦しみを、被害を笑う世界に変わっていっています。完璧以外を許せない世界は誰もが生きづらいと思うので、ゲイバーで起きた物事からダメな者をダメなまま認める世界を望みます。人に迷惑をかけるダメは、みんなで律せばいい。ゲイバーで全裸になる人も、マジでダメと思っています。フリじゃないです。脱がないで。
――ゲイバーでは脱がないこと、心得ます……(笑)新作の中では性の話題にも触れ、「性はセックスの行いだけに目が行きがちだが、結局はコミュニケーションの在り方のひとつだ」という言葉を綴られておられましたが、実際パートナーとの性関係に悩んだ時はどうしたらよいでしょうか。
もちぎさん:セックスはひとりではできない。つまり心身を許し合うという同意がなければ、オナニーやレイプと変わらない。きちんと2人で性について話し合える環境と関係を揃えられたらいいなと思います。3人以上は知らないです。3Pは専門外なの。