パンプスが足に合わない私は、お気に入りのブーツでどこまでも歩いて行くのだ
『わたし史上最高のおしゃれになる!』『お金をかけずにシックなおしゃれ』などの著書があるファッションブロガー小林直子さんが、愛用しているアイテムをご紹介します。
人それぞれ身体の形は違います。ほとんどの人が着ている既製服には、「ゆるみ」と呼ばれる身体の動きに対応する余白があります。「ゆるみ」は、身体の動きに対応するために余分な部分を作る、あるいはストレッチ素材を使用するなどによって作られます。
足も同様に人それぞれ形状に違いはありますが、服ほどにゆるみがあるものではありません。また必ずしもストレッチ素材でできているわけではないので、どんな靴も誰にでもぴったりというわけにはいきません。人によっては、ある種類の靴を履いて歩くのが容易ではない場合もあります。
私の足は、見た感じは普通なのですけれども、幅が細く、甲に厚みがないため、いわゆるパンプスを履いて歩くと脱げてしまい歩けません。靴の学校を卒業した靴を熟知している方に私の足を見てもらったら、「小林さんみたいな足の人は、パンプスは履けません」と、お墨付きをいただきました。
脱げるだけならストラップがある靴を履けばいいのですが、元々かかと骨が少し出っ張っているため、靴の後ろの部分が固く作られているものは、その骨が靴の内側に当たり、まめができて血が出るほどで、これもまた、1日じゅう履いてはいられないのです。
そんな足の持ち主なので、もっぱら履くのはサンダルかブーツ、そして柔らかい素材のスニーカーか、バックレスのサボやミュールとなります。この中で特に好きなのがブーツです。ブーツという靴の形状も好きですし、脱げる心配もなく、骨が当たって痛いこともないので、1年のうち一番ブーツを履いている時間が長いです。
いろいろある種類の中でも、一番好きなのがロングブーツです。20代のころ、この一番好きなロングブーツはなかなか買えませんでした。理由はロングブーツはお値段がお高いから。
もちろんワンシーズン履いたらだめになるような安価なロングブーツも売ってはいました。しかし1990年代、自分が気に入って、かつ長く履けるようなロングブーツは、三、四万円はしたのです。それはなんと、私が働いていたアパレル一部上場企業でいただいた手取り額の3分の1なのでした!
正社員としてアパレル企業で働いても欲しいロングブーツは買えないのだと、仕方なくショートブーツばかり履いていた20代を過ぎて、ロングブーツが買えたのは30代になってからでした。
今でも覚えています。つい先日取り壊しが始まった小田急百貨店の新宿店の2階の靴売り場で買った、ヴィヴィアン・ウエストウッドの8センチヒールのロングブーツ。たいそう気に入って、私はそのブーツでイギリスを旅しました。しかも一人旅で、キャリーケースを引っ張って、グラストンベリーまで行きました。
グラストンベリーへ行くために、停留所でバスを待っていたら、現地のおばあちゃまが「よくも遠いところからここまでやってきたわね~」と声をかけてくれました。「好きなロングブーツを履いているのですから、ここまで来られますとも!」と、私は心の中で返答しました。
どんな靴も誰にでもぴったりというわけにはいかない
1年のうち一番ブーツを履いている時間が長い
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