NHK総合ドラマ『大奥』が大きな転換期を迎えた。若い男子ばかりがかかり、命を落とす伝染病・赤面疱瘡を克服したことで、男子の数が女子と同数まで回復。 　世の中が大きく変わっていくことになる。 　それを実現させたのは、退屈しのぎに自分の孫に毒を盛って間引いてきたほどのバケモノ・徳川治済（仲間由紀恵）の息子であり、治済が己の権力ほしさに人痘を受けさせたことで将軍となった11代将軍家斉（中村蒼）だった。 【写真で振り返る大奥15話】⇒画像をタップすると次の画像が見られます 　振り返ると、初めて女性が将軍に就いたのは、3代家光（堀田真由）だった。 　それまで世は男が治めており、家光も、赤面疱瘡で亡くなった父の身代わりでしかなかった。そのため、当初女であることを伏せられていた。その後、世の中は女が回し、治めるようになり、将軍も女が女であることを隠さず務めるようになっていった。 　8代将軍吉宗（冨永愛）のころには、将軍さえも、かつては男が将軍だったと知らなかったまでになるが、「没日録」を読んだ吉宗は、赤面疱瘡を撲滅せんと立つ。11代にして、その悲願が達成されたわけである。 　吉宗の意思は確かに受け継がれてきた。特に、医療編での平賀源内（鈴木杏）や青沼（村雨辰剛）、田沼意次（松下奈緒）や黒木（玉置玲央）らの尽力は心に残った。それを家斉が最後に権力で一押ししたと言っていい。しかし一方で、本来受け継がれるべき徳川の政は受け継がれてはこなかった。 　そもそも、春日局（斉藤由貴）が家光の娘を男の身代わりにしてでも徳川の“血”にこだわったのは、決してふたたび戦国の世にしないためだった。冷徹ではあったが、泰平の世をと、天下のことは考えていた。しかしこの“血”へのこだわりは、戦国という国と国との争いは止めたが、血族間での争いを生んだ。 　吉宗のような名君も生んではいるものの、彼女も本来はとても将軍になれる立場ではなかった。紀伊藩主の3女である吉宗が将軍になれたのは、加納久通（貫地谷しほり）が裏で動いたからだった。確かに吉宗には高い志と能力があった。そして吉宗でさえ、田沼には意思を継いだが、大御所として最後まで政を行い、娘の家重（三浦透子）を9代将軍とはしたものの、政を「受け継ぐ」ことはできなかった。 　10代将軍家治（高田夏帆）は自らも娘も毒を盛られた。これも吉宗の孫である“血”によって、自分も当然権力を手にしていいと考える治済の策によるものだった。