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“男女逆転”『大奥』、冨永愛が演じる徳川吉宗に感嘆。期待以上すぎた

 いわゆる“男女逆転大奥”を描いた、よしながふみの傑作漫画の連続ドラマ化『大奥』が、NHK総合の「ドラマ10」枠でスタートした。綴られるのは徳川3代将軍家光の世から大政奉還まで。
冨永愛演じる徳川吉宗が表紙の『大奥』7巻(白泉社)

冨永愛演じる徳川吉宗が表紙の『大奥』7巻(白泉社)

 1月10日に放送された第1話では、プロローグとして8代将軍徳川吉宗と、新たに大奥に入った旗本の青年のエピソードが描かれ、とりわけ冨永愛の吉宗公に「期待以上!」の賞賛の声が集まる幕開けとなった。 ※この記事にはドラマのネタバレがあります。

冨永愛をキャスティングして大正解

 史実として、日本は家光の世に鎖国令が発布されたが、本パラレルワールドでは、赤面疱瘡なる、男子にのみかかる奇病の流行による男子人口の激減を、他国に隠し、攻め入られぬために取ったのが鎖国だったとしている。つまり、将軍が女であることは、外国には伏せられているのだ。原作と同じく、吉宗の世から物語が幕を開けるのは、家光の世に逆転し、女将軍の継承がもはや普通になっている世を指し示すとともに、その成り立ちを、吉宗とともに追っていくことからスタートするためである。
 とにもかくにも、この連続ドラマが成功するかは、吉宗を演じる冨永愛にかかっていたと言っていい。そしてそれは成功した。質素な掻取(かいどり)に身を包みながら、御鈴廊下に現れた将軍・吉宗は、完全にその場を支配していた。時代劇初挑戦の冨永愛が、一瞬でこのパラレルワールドを成立させてみせたのだ。しかし、この文句なくカッコいい、すっくと、涼やかに立つ冨永将軍は、予想以上だったとはいえ、全くの予想外だったわけではない。「下がりゃあ!」や「この狸おやじ!」の喝や、大河ドラマ常連の名馬・バンカー君を颯爽と乗りこなす姿も。予想外だったのは、可愛らしい吉宗を見せたことだ。

原作とは違う部分も、ドラマ版で見せた“別の顔”とは

 脚本の森下佳子は『JIN―仁―』、連続テレビ小説『ごちそうさん』、大河ドラマ『おんな城主 直虎』、『義母と娘のブルース』『天国と地獄〜サイコな2人〜』などの名脚本家であり、その実力は折り紙付き。とはいえ、全19巻の原作をまとめるのは至難の業のはず。当然、削られたシーンや変更もある。中でも第1話での大きな変更は、将軍の最初の夜とぎの相手である「ご内証の方」の役目にまつわるエピソードだった。
 ドラマではこのお役目のしきたりについて、吉宗も、選ばれた水野祐之進も夜が明けてから知るが、原作では、床入りの前に知る。ドラマと原作では全く違う趣となったが、ドラマでは、吉宗の凛とした強さと美しさとともに、この変更によって、力を抜いた吉宗の別の顔を覗かせてみせた。  水野に関しても、エピソードを絞ったドラマでは、「好青年だから選ばれた」との理由付けに重きを得ざるをえなかったが、この変更はよりドラマ版での水野らしさを深めた。さらに水野を演じた中島裕翔が説得力を持たせ、原作とは違った魅力を持つ水野を生み出した。昨年のドラマ『純愛ディソナンス』で俳優としての幅を見せた中島だが、来月公開される映画『#マンホール』では、ぜひともこの水野像を忘れずに観ると、俳優・中島の実力にさらに驚かされること請け合いである。
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本音を言えば半年かけてほしかった
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