Entertainment

「口の筋肉が…」おじさん教師演じた36歳・岩田剛典が明かす“長ゼリフ”の裏側。国際映画祭では観客賞

 ある日、中学生たちが一斉に金髪になり、校則に対する抗議を始める……。『決戦は日曜日』(2022年)などの坂下雄一郎監督がユニークなプロットで、オリジナル脚本を書いた本作『金髪』が、11月21日(金)から全国で公開中だ。 岩田剛典 主演は三代目 J SOUL BROTHERSの岩田剛典。『新解釈・三國志』(2020年)や『ウェディング・ハイ』(2022年)などのコメディ映画にも多く出演してきた。本作では金髪の中学生に翻弄される主人公の教師・市川役をコミカルなテンポ感で演じる。坂下監督の緻密な動線設計、月永雄太の端正なカメラワークが、岩田剛典の演技を際立たせる。  また本作は、11月5日に閉幕した第38回東京国際映画祭で観客賞を受賞したことでも話題を集めている。  今回は主演の岩田剛典さんにインタビューを行い、長台詞のテンポ感や細かな動作の作り方など、本作の随所できらめく瞬間を読み解く。LDHアーティストをこよなく愛する“イケメン研究家”加賀谷健が、作品間を自由に紐付けながら聞いた。

初の教師役で「撮影現場はお芝居に集中できる環境」

金髪 場面写真

©2025「金髪」製作委員会

――『金髪』で岩田さんが演じる主人公・市川役が、初の教師役ということになると思いますが、実は名探偵の助手役で出演したテレビドラマ『シャーロック』(フジテレビ系、2019年)第7話ですでに……。 岩田剛典(以下、岩田):そうでしたね、コミカルな場面で少しだけ演じていました。 ――そうなんです、寸劇的に一人芝居で演じていました。とはいえ、今回、本格的に教師役を演じてどうでしたか? 岩田:それでいうと、この映画は必ずしも学園物というわけでもないんですよね。尚且つ教師として指導しているシーンがあるかというとインサートで入っているぐらいです。だから教師が主人公ではあるけれど、本筋はそこではない作品だと思っています。 ――中学生が一斉に金髪になって校則に抗議するという本作のオリジナル脚本は、香港アジア・フィルム・ファイナンシング・フォーラムIDP部門で企画大賞を受賞しました。企画開発自体は2021年に始まったそうですが、岩田さんが脚本を読んだのはいつ頃でしょうか? 岩田:一昨年の秋か冬だったかと思います。オファーをいただいた時、脚本が非常に緻密で練り上げられていると感じました。坂下雄一郎監督がオリジナルで書かれていることを知り、これはすぐにやりたいという気持ちでワクワクしました。 撮影は1年半前、昨年の春くらいです。何せ脚本が秀逸なので僕が役作りをしたというより、脚本に身を任せて市川役にすんなり入ることができました。坂下監督ともいい出会いになり、撮影現場はお芝居に集中できる環境でした。 ――役の背景を掘り下げる履歴書などを作る必要もあまりなかったわけですね? 岩田:履歴書は、演じる役の時系列を整理してバックグラウンドから深掘りするためにやるものだと思いますが、この役に関しては何らかの過去の出来事が影響して現在の性格を形成しているだとか、そういう描写がないのでやりようがなかったですね。現場ではとにかくリズミカルであること。あの長台詞をいかに噛まずに演じられるかということに注力していました。

コメディのテンポ感で長台詞を「一息で何文字進めるか」

岩田剛典――7月期放送の主演ドラマ『DOCTOR PRICE』(日本テレビ系)での長台詞が話題でしたが、『金髪』の市川も相当な長台詞を操る役です。どちらの方が長台詞なのでしょうか(笑)? 岩田:それがですね、『DOCTOR PRICE』の方が段違いでした(笑)。準備期間があまりない中での連ドラ撮影ということもあり、台本が手元にきたらすぐに長台詞を覚えなければならず。 『金髪』は『DOCTOR PRICE』よりだいぶ前に撮影しているわけですが、その当時はこんなに台詞量が多い作品はこれ以上あるかと思っていたんですが、またすぐ出会いましたね(笑)。『金髪』も長台詞を頭に叩き込むだけでも大変な作業量で、台詞間のブレイクがないので口の筋肉が……。 ――長台詞に関して坂下監督からは何か注文がありましたか? 岩田:監督からはなるべく台詞を「流暢に、澱みなく、句読点を読まないようにやってほしい」と演技指導がありました。台本を見ると、台詞がブロックのようにびっしり書いてあり、これは一息で何文字進めるかという勝負だなと思いました(笑)。 コメディ作品であり、会話劇でもあるので、台詞のテンポ感で観客を引きつけなければなりません。自堕落な社会人である教師・市川と正論を言ってくる中学生・板緑との世代間ギャップを浮き彫りにする構図を際立たせるため、口論になる場面では板緑役の白鳥玉季さんとの掛け合いをどんどんテンポアップしていきました。 ――『新解釈・三國志』や『ウェディング・ハイ』など抱腹絶倒のコメディ出演が何作もありますが、コミカルな役柄を演じる上でのポイントを教えてください。 岩田:コメディの現場は楽しいですね。ポジティブな感情になっている時間が多い気がします。とはいえ、コミカルな役を演じるからといって、演じる側から笑わせそうと思うわけでもなく、とにかくテンポ感や緩急を心がけています。 各場面の落とし所には、坂下監督のコメディセンスが光り、僕は脚本に忠実に演じているだけです(笑)。それでも笑っていただけるということは、それは脚本自体が面白いということだと思います。
次のページ 
市川らしい“微動”の演技や「くしゃみ」のシーン
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ