障害を抱える子を妊娠し、自殺考える母親から相談が……57歳元牧師が2人の障害児を迎え育てるワケ
元奈良キリスト教会牧師の松原宏樹さん(57歳)は、障害を抱えた子どもの命が蔑ろにされる現状を嘆き、幼き命を救う活動に尽力している。2018年に『小さな命の帰る家』を立ち上げ、独自で相談対応や受け入れ先の紹介などの支援を提供してきた。
活動の一環として、松原さん自身も50歳を超えてから、2人の障害児を養子として迎え入れた。以降、牧師の仕事を続けることを断念し、退職金を切り崩しながらも育児や活動に尽力している。
日々のケアに追われ、生活は決して楽なものではない。2人の成長のペースもまた、世間一般の物差しとは異なる。それでも、松原さんは子育てを「この上ない喜び」と話す。
松原さんに取材を打診すると、希望する時間は「10時過ぎ~12時でお願いします」と返ってきた。一日のなかで、まとまって時間が取れるのは、この時間帯に限られるそうだ。
現在、7歳のやまとくんと、5歳の恵満ちゃんを育てる松原さんの日常は忙しない。
「やまとくんはダウン症候群と重い心臓疾患を抱え、発達は1歳前後で喋ることはほとんどありません。上あごが大きく、下唇が分厚いため、咀嚼が難しい。食事はつきっきりで与えています。排泄も手助けが必要なうえ、睡眠障害や発達障害を抱えているため、常に3~4種類の薬を服用させます。
恵満ちゃんもまた、ウエスト症候群という重いてんかん症候群と、染色体の異常があり、医者からも今後の成長がどうなるかわからないと言われています。食事は経口摂取ができないため、胃ろうから、毎食1時間ほどかけて直接胃に栄養を流し込んでいます。
また、気管切開をして人工呼吸器を使用しているので、肺に痰が溜まらないよう1日3回、痰の吸引します。やまとくんと同様、投薬も欠かせません」
2人分の食事や投薬、排泄の介助のほか、養護学校やデイサービスへの送り迎えもあり、日中に気を休められる時間はわずかだ。夜遅い時間も、やまとくんは添い寝が必要で、恵満ちゃんには痰の吸引を行うため、睡眠は細切れになる。
加えて、冒頭にも示した通り、松原さんは『小さな命の帰る家』の活動として、親御さんの相談や養育先探しなどの支援にも奔走する。
育児の合間を縫って、障害児を持つ親御さんの相談に乗る傍ら、受け入れ先の紹介も請け負う。専門里親(虐待や障害などの理由で専門的なケアが必要な子を養育する)や、特別養子縁組(家庭裁判所の審判により実の子と同じ法的な親子関係を結ぶ制度)などの受け入れ先を探す。
やまとくんと恵満ちゃんの育児は、松原さんの妻や同居している実子が協力的なため、分担しながらおこなっている。それでも育児と並行して、諸々の活動をこなすと、それまで続けてきた牧師の職を断念せざるを得なかった。
資金面も、現在は赤字で、退職金を切り崩しながらの生活だという。
収入源は、松原さんの講演費や地方紙への原稿費に、働いている妻の給料、活動の寄付金などで賄っている。一方で、支出は、家庭の生活費や2児の医療費に留まらず、全国各地からSOSを寄せる親御さんのもとへ向かう往復の交通費も重なる。
「基本的には、親御さんからの相談は電話で対応しているものの、どうしても“緊急性”を要する局面もあります。例えば、障害を抱えた赤ちゃんが生まれた事実を知って、旦那さんが家出してしまったケースがありました。子どものことに加え、旦那さんとの関係も崩れ、奥さんが鬱病で起き上がれなくなってしまった。すでに上の子どももいたとのことなので、家族の状況を踏まえると訪問したほうが良いなと。
それから子どもの延命を防ぐため、治療に同意しない親御さんも一定数います。幼い頃に患った障害を放置すると、後遺症や命の危険にも直結するので、そうした際は親御さんを説得するために病院へ向かうこともあります。
これらはあくまでも一例に過ぎませんが、ひっ迫した状況の相談は絶えません。当然ながら、障害を抱えた子どもを助けるためには、まず親をケアしなければなりません。仮に、両親やネグレクトや心中をすれば、犯罪者になりうるケースも想定されます。最悪の事態を防ぐため動かざるを得ない場合もあります」
食事や排泄もつきっきり
退職金を切り崩しながらの生活
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