「妊娠を謝罪して反省文を書け」職場のマタハラ、驚きの実態
女性の活躍が叫ばれる一方で、深刻な問題となっている“マタハラ”。
「マタハラ」とはマタニティハラスメントの略で、働く女性が妊娠・出産を機に嫌がらせを受けたり、雇い止めや自主退職に追い込まれたりすることを指します。
その実態について詳しく書かれたのが、マタハラを経験してNPO法人「マタハラNet」を立ち上げた小酒部さやかさん(代表理事)の著書、『マタハラ問題』(ちくま書房)です。
本書で紹介されているマタハラの実例は、びっくりするほどひどいものでした。
本書には、新卒入社してすぐに妊娠が発覚し、「マタハラNet」に相談した女性のケースが載っています。
相談内容を一部引用すると
<女性上司2人に(妊娠を)打ち明けたところ、「入社早々何を言っているんだ!」と怒られ、
「会社説明会や入社試験で多方面から人選してベストと思って入れたのに、来年の入社試験には貞操観念を加えなきゃならないわ」とか、
「就活の広告費に1000万払って、結果コレか!」
「堕ろさないと退職してもらう!」
「10数えているうちに麻酔が聞いて(中絶手術は)終わるからな!」と言われたという。>
(第二章 「マタハラ問題」のすべて)
結局この女性は、「悩んだ末、就職の広告費に1000万円という言葉が重くのしかかり、堕ろすことにしたという。」(第二章 「マタハラ問題」のすべて)。あまりにもブラックなマタハラに、驚愕してしまいました。
また、3人の子持ち女性から「マタハラNet」に寄せられた相談も、あまりにも酷い仕打ちです。
<「3人も子どもがいるんだから、もういいじゃないの」と怒鳴られ、職場のスタッフひとりひとりに「妊娠してすみません」と謝罪をさせられた女性もいる。
これはあまりにも酷いのではと、上司に相談に行ったところ、「謝罪して当然だ」と言われ、「このたび妊娠したことは誠に申し訳ありませんでした。以後、妊娠しないようさせていただきます」と、反省文まで書かされたというメールをもらったことがある>
(第二章 「マタハラ問題」のすべて)
この少子化時代に、4人目の子どもができたのは喜ばしいこと。どんな理由があっても、会社には産む自由を奪う権利なんかないですよね。
“昭和の価値観”を持った上司や、育休を「ズル休み」扱いする同僚など、男女や世代にかかわらずマタハラに加担する人がいる。しかし、(本書でも軽く触れられていますが)悲しいのは、妊婦自身が今後のマタハラの遠因になってしまう場合です。
筆者の周りで聞いたことがあるのが、「妊娠してるんだから、仕事はできなくて当たり前」という態度で、権利ばかりを主張する“逆マタハラ”女性がいるという話。そういうことがあると、妊娠・出産に対して職場が拒否反応を起こしてしまい、後に続く女性が育休をとりにくくなったり、マタハラ被害に遭う可能性もありそうです。
さまざまな原因で引き起こされるマタハラ。その解決の糸口も書かれている本書は、参考になる1冊です。
<TEXT/舟崎泉美>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
女性上司に「中絶しろ」と迫られて
「妊娠してすみません」と反省文を書かされた
マタハラをする人は男女や世代にかかわらない
舟崎泉美
1984年生まれ。小説・脚本・ゲームシナリオなどを執筆中。著書に『ほんとうはいないかもしれない彼女へ』(学研、第1回・本にしたい大賞受賞作)
http://izumishiori.web.fc2.com/
『マタハラ問題』 妊娠・出産を理由に嫌がらせを受ける「マタハラ」が、いま大きな問題となっている。マタハラとは何か。その実態はどういうものか。当事者の声から本質を抉る。 |