News

急死したカリスマ・藤巻幸夫さん、担当編集者が見た素顔

2014年3月15日、出血性ショックにより急逝した藤巻幸大さん(本名・幸夫さん、54歳)。伊勢丹がレディスファッションの牙城となったのも、バイヤー・藤巻さんの功績が大きいと言われています。熱いビジネスマン、政治家としてファンの多かった藤巻さんについて、昨年末まで共に仕事をしてきた編集者・ライターの島影真奈美さんにコラムを寄稿して頂きました。 ====================

藤巻さん(「結の党」プロフィールページより)

 伊勢丹のカリスマバイヤーとして名を馳せ、現在は参議院議員としても活躍していた藤巻幸大さんが急逝されました。クリスマスの頃に急性すい炎で倒れ、入院されていたそうです。享年54歳という、早すぎる死を悼む声がTwitterやFacebookのタイムラインにあふれ、テレビや新聞が次々と報じるのを目にしても、まだ実感がわかずにいます。  たくさんの方がご存じのことかと思いますが、藤巻さんは自他ともに認める“お祭り男”でした。昨年12月中旬にシェラトン都ホテル東京で開催された大忘年会ではマイクを片手に会場中を走り回り、声を枯らして大抽選大会の当選者を発表していらっしゃいました。 「当選番号を読み上げてるだけでパーティ終わっちゃったよ!」と、いつものようにガハハハと笑い、場を盛り上げていた藤巻さん。あれが元気な藤巻さんにお会いできる最後の夜になるなんて想像もしていませんでした。

無類の“電話魔”だった

藤巻百貨店

「藤巻百貨店」での対談ページより(ビームス代表取締役 設楽洋氏との対談)

「その人なら俺、知ってるよ! 電話してあげるよ。ちょっと待って!!」  藤巻さんは無類の“電話魔”でもありました。思い立ったら、即電話。「この人に会いたい」と思ったら、すぐ会いに行く。即断即決の行動力が発揮されるのは、インタビューの席でも例外ではありません。  ひょんなご縁で、藤巻さんがプロデュースするオンライン上のセレクトショップ「藤巻百貨店」(2012年~)を立ち上げからお手伝いさせていただくことになり、月1回ペースで藤巻さんと一緒にさまざまなゲストの方々にお話を伺ってきました。インタビューはしょっちゅう脱線。気のおけない友人同士の雑談のような時間になることもしばしば。そんな中で、ゲストの方がポロリとこぼした悩みを藤巻さんは聞き逃しません。「あいつに頼めば、なんとかなるよ。ちょっと待って」と携帯電話を取り出すと、取材チームが止めに入る隙もないような素早さで電話をかけ始めてしまうのです。  そこにあるのはひたすら、ゲストとして来てくださった方への愛情。でも、藤巻さんもさることながら、ゲストの方々も忙しい方ばかり。当然ながら取材時間は限られています。5分程度ならともかく、5分から10分、10分から15分……と取材の回数を重ねるごとに伸びていく電話タイムは悩みの種でした。あるとき、思い切って藤巻さんご本人に相談してみることに。すると、「いやぁ、申し訳ない!!」と藤巻さん。こちらが恐縮するぐらい謝ってくださり、万が一にも機嫌を損ねたらどうしようと不安を感じたことが申し訳なくなるほどでした。  でも、これにて一件落着と思いきや、その後もたびたび、取材中に「ちょっと待って!!」と携帯電話を取り出す藤巻さん。次の瞬間ハッとして照れ笑いしながら「電話はあとにしよう。うん」とひとりごとを言ってみたり、茶目っ気たっぷりに「電話をすると叱られるんです」としょんぼりしてみせたり。そんな姿にゲストの方々は吹き出し、肩をゆすって大笑い。藤巻さんがいらっしゃる取材現場はいつも楽しく、笑いに満ちていました。

圧倒的な気遣いと瞬発力

 もっともっと現場をご一緒したかった。それがかなわなくなってしまったことがとても悲しく、くやしいです。思い出すのは満面の笑顔の藤巻さんばかり。この期に及んでまだ「なーんちゃって、びっくりした?」とひょっこり姿を現してくれるような気がしてならないのです。  藤巻さんの圧倒的な気遣いと瞬発力、そして優しさに間近で触れることができたのは、私にとってかけがえのない宝物です。あの晴れやかな笑顔に少しでも近づけるよう、がんばろう。迷うヒマがあったら電話、迷ったら一歩踏み出そう。そんなことを思いながら、最後のお別れに伺います。本当に、本当にありがとうございました。 <TEXT/島影真奈美>
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ