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『報ステ』小川彩佳アナ、実は音楽の趣味がやたら良い

小川彩佳

音楽の話がよく出る小川アナのブログ

 去る4月28日、突如マイクロソフト社からアナウンスされたInternet Explorerの脆弱性の問題。しかしいかんせんデジャヴというか「もう何度目だよ」とツッコミたくなる方も多いかと思いますが、今回はかなり深刻な模様。  それはあの報道ステーションがトップニュースとして扱ったことからも明らかです。パワーポイントの存在すら知らないメインキャスターへのレクはさておき、一刻も早く伝えなければならなかった危急性がうかがえます。  このIE脆弱性問題より前に世間を騒がせたのが、XPのサポート終了でした。そのニュースを同番組で伝えた際、サブキャスターを務める小川彩佳アナウンサーのこんな一言も話題になりました。  「(XPから)無料交換してくださればいいのにって思いますよね。」  これに対してネットからは非難轟々。「マイクロソフトはボランティアじゃねえぞ」とか「長いことサポートの終了告知してただろ」とか、さらには「技術者をタダ働きさせる気か」といった悲痛な叫びも見受けられました。  当然のことながら、こういった反応が99%正しいのは言うまでもありません。しかし1%でも小川さんを擁護する部分があるとすれば、それはPCの買い替えやサポート云々といった問題が少なからずストレスフルであること。そして彼女がロック好きだということです。

王道の小川アナ、マニアックな高樹アナ

 テレビ朝日のサイト内にある小川さんのブログにはたびたび音楽の話題が登場します。サマーソニックの思い出やボブ・ディランの『風に吹かれて』についての回からは、本当にこの種の音楽が好きな様子が伝わってきます。  本題が音楽でないときにも文末にその日の気分で選ばれた曲が記されているのですが、そのチョイスが実に幅広い。ナット・キング・コール、CCR、ジョージ・ハリスン、テンプテーションズ、スノウパトロール、クラッシュ、エリオット・スミス、ジェイソン・ムラーズ、ブラー、ハリー・ニルソン、キッド・ロックとシェリル・クロウ……こうして挙げていくと、やはりOSは無料で配布すべきだとさえ思えてくるから不思議です。  ここで音楽がお好きな方ならば、高樹千佳子アナウンサーのことを思い出されるかもしれません。12段組の棚がおびただしい数のCDで埋め尽くされている写真や、彼女が選んだ年間ベストアルバムのマニアックすぎるリストに多くの洋楽ファンが熱狂しました。それからすると小川さんのチョイスはかなり平板な王道だと言えます。もしかしたら物足りなさを覚える方もいるかもしれない。
高樹千佳子

高橋アナのブログ「ちーたか」

 高樹さんは自身でラジオ番組を持っているプロのDJでもあります。微に入り細に入りミュージシャンや楽曲を紹介することが求められる立場にある。すると相当程度の知識を共有した人たちの存在を前提に書いたり話したりしなければならない。その中で愛好家同士の理解や共感を深めていく方向に向かう。もしかしたらネットで彼女の洋楽マニアぶりが取り上げられたことでハードルが上がってしまった側面もあるかもしれません。

ブログで挙げる曲名が心憎い!

 そこへいくと小川さんと音楽との付き合いはそれよりもゆるい。だからこそそこで挙げられる数々の固有名詞が情報の伝達でなく日常の色彩や匂いとともに立ち上がってくる。言わば最初にそれらの音楽に触れたときの新鮮さが失われていないのです。その新鮮さが、音楽にそこまで通じていない人たちにとって優しい客観性を感じさせてくれるのかもしれません。  2012年6月15日の『アメウタ』と題されたエントリーで、小川さんは“雨の歌暫定トップ5”を以下の通り公開しています。 <5>『The rain song』 Led Zeppelin <4>『Rain』 Priscilla Ahn <3>『Why does it always rain on me』 Travis <2>『Raindrops keep falling on my head』 B.J.Thomas <1>『Have you ever seen the rain』 CCR  このトップ2に、個人的な思い入れを抑えて、ビッグネームでまとめあげるあたりがなんとも心憎い。世代的にはトラヴィスやプリシラ・アンを押したいところなのでしょうが、きちんとロック・ポップス史を踏まえたうえで、その中にご自分の趣味があることを認識されている。なにげない、ただ自分の好きな音楽を他人に披露するということの中にもきちんと常識の力が働いているように感じるのです。 ●『Why does it always rain on me』 Travis(http://youtu.be/PXatLOWjr-k) ●『Rain』 Priscilla Ahn(http://youtu.be/MKfDwChOoHI)  そんな小川さんの「無料交換してくださればいいのに」という発言で思い出したのが、デヴィッド・ボウイの友人である情報通信会社の重役のこの言葉。  「人はこれからどんどん不便な暮らしを求めるようになるだろう。」  確かに何か脆弱性があるたびにパッチをあて、数年ごとに機種を買い替えさせられ、常にウイルスの脅威に対して備えを怠ってはいけない。ふと考えると、この状況の一体どこが便利なんだろう。ああめんどくせ。ネット上では軽く炎上してしまった彼女の失言ですが、案外共感した方も少なくないのではないでしょうか。  小川アナのブログでは2013年頃から文末の「今日の一曲」がなくなってしまい寂しい限りですが、また気が向いたら好きな音楽のことを書いていただきたいものです。  ちなみに先のボウイの友人の発言は『ヒストリー・オブ・ロックンロール』というドキュメンタリー作品において引用されたもので、制作年は1995年。ウインドウズ95に全世界が沸いた年でありました。 <TEXT/音楽批評・石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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