一方、物流関係に勤めているハルカさん(43歳)は、以前と変わらず毎日出社している。
結婚して14年たつ夫は工場に勤める職人だが、仕事がなくなり、現在は自宅待機の状態。中学生のひとり娘は父親を嫌う年齢でもあり、父娘は同じ家にいながらほとんど話もしていないようだ。
「夫はもともと寡黙なタイプなんですが、娘とふたりきりで家にいるようになってから、やけに娘に説教ばかりしていたようです。
それがイヤで、娘は自分の部屋に鍵をかけるようになった。そのことを夫は非常に怒っていて、『あんな娘になったのはおまえの教育が悪いからだ』なんて前時代的なことまで言い出していました」

家にいるのだから、と最初は家事を引き受けてくれたこともあったが、長く続く自宅待機に焦燥感がつのるようになったのか、いつしか家事はしなくなり、昼間からリビングでお酒を飲んでいると娘から報告があった。
「もともと酒好きで強いのでべろべろになっていることはありませんが、確実に酒量は増えていますね。しかも最近は、近所に夕方からあいている居酒屋があるのでよく行っているみたい。私が帰宅すると、まだ帰ってないこともあります。
娘は父親が出かけるとホッとしているようですが、経済的なことを考えると、ひとりで外食されるのも困るんですよね」
「前からそういう本性はちらちら出ていたような気がします」
ハルカさんから、夫の健康を心配する言葉は出てこない。彼女自身、もう夫には愛想が尽きていると言った。
「結婚して14年たつけど、こんな時期だから夫が変わってしまったのかというと、そうでもないんですよね。前からそういう本性はちらちら出ていたような気がします。娘に何かあると悪いのは母親である私、自分は家族のために働いているんだからと何度か言われましたしね。
ただ、こうなったときに酒に逃げるタイプだとは思わなかった。夫にとってお酒は常に楽しいものだったから。逃げるようになったら人間、終わりでしょう。私は夫とともに歩いていこうという気持ちが、ほとんどなくなっています」
結婚して14年、これまで構築してきた信頼関係があったとしても、それは一瞬で崩れてしまうのかもしれない。
<文/亀山早苗>
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