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長澤まさみが荒れたシングルマザーに。転落する人生を演じ、善悪を超えた/映画『MOTHER マザー』

なにげないおばちゃん感もナチュラルに演じてしまう

映画『MOTHER マザー』より

映画『MOTHER マザー』より

 長澤まさみ(演じる秋子)の美しさを違う方向に生かせばどんなに良かったか。でもその美しさも2人目の子供(娘)が生まれ、歳月が過ぎていくとじょじょに失われていく。鏡を見て己の老いを愚痴る長澤まさみは衝撃であるが、そういうなにげないおばちゃん感も長澤まさみはナチュラルに演じてしまう。  若いときの若さと美しさを持て余しているヤサグレ感、いろんな人に噛み付くように怒鳴る精神不安定さ、若さが失われてもない何をやっても悪びれないふてぶしさから、それでも息子がどんなことがあっても離れがたいなんともいえない魅力まで。そこもまた阿修羅像のようである。  もうすぐ劇場版のパート2が公開になる人気作「コンフィデスマンJP」で演じている信用詐欺ダー子が、「おサカナ」と呼ぶ標的から何億もまきあげて漫画チックにはしゃいでいる親しみやすさとは全然違う。 「コンフィデンスマンJP プリンセス編」

舞台では極めてエキセントリックな女性を演じることも

 7月10日、NHKの「シブ5時」に出演して映画について語った長澤は、「MOTHERマザー」の秋子に共感できず、周平目線で台本を読み、秋子の理不尽ながら周平に対して力のある部分を演じることで物語が成立できると思った、と語っていた(大意)。  ポップな役もリアリティーのある役も、求められた役を的確に演じる今年俳優生活20年を迎えた俳優は「楽して高みは目指せない」とも語り、着実に力をつけていきたいという堅実さを見せた。
2003年 斎藤 清貴「Summertime Blue―長澤まさみ写真集」学研プラス

2003年 斎藤 清貴「Summertime Blue―長澤まさみ写真集」学研プラス

 2000年、第5回の東宝シンデレラオーディションをきっかけにデビューした長澤。さわやかな美少女という印象ながら、初期から演技に対する真面目さは定評があった。日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した「世界の中心で、愛をさけぶ」(04年、行定勲監督)では、白血病治療の副作用がある設定のため髪を剃った。  もともとは人前に出るのが苦手なほうとインタビューで聞いたことがあるのだが、チャンレンジ精神があるようで、舞台では極めてエキセントリックな女性を演じることもあり、単なるさわやか美少女ではない面を発揮するようになり、演技の幅を着実に広げている。
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瞬間をただ生きているだけの人間を演じる長澤まさみ
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