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長澤まさみが荒れたシングルマザーに。転落する人生を演じ、善悪を超えた/映画『MOTHER マザー』

いま、この瞬間をただ生きているだけの人間を演じる長澤まさみの姿

劇団☆新感線RS「メタルマクベスdisc3」

劇団☆新感線RS「メタルマクベスdisc3」

 2018年、劇団☆新感線RS「メタルマクベスdisc3」でマクベス夫人を演じた。この役は、夫・マクベスを一国の王様に出世させるため、殺人を犯すようにそそのかす。他人から見たら悪妻、当人たちから見たら夫想いの良妻を長澤は魅力的に演じていた。  罪を罪としておそろしい形相で演じきるのもいいだろう。でも、長澤の場合、こんな人がそんなことするわけないという清さや甘さを残しているところも罪であり、良さでもあり、ヒトは元から悪ではなく何かのきっかけで転がり落ちて人生が大きく変貌してしまうだけなのだと思わせる。 「MOTHER マザー」の秋子もそうで、傍から判断する善悪など関係ない。いま、この瞬間をただ生きているだけの人間を演じる長澤まさみの姿は、戦いの神でもやがて美しい仏像として人々に愛される阿修羅そのものである。 <文/木俣冬> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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