ブラック美容室のコロナ事情「従業員の感染予防は自己責任と言われ…」
コロナ禍で過去最悪の状況となりつつある「女性の貧困問題」。従来からの当事者はもちろん、貧困とは無縁だったはずの女性たちも窮乏に陥っている。本企画ではコロナ禍で経済的危機に瀕している女性たちに密着取材を敢行。彼女たちの切実な胸の内に迫った――。
「コロナになって職場環境も経済状況も悪化しました」
手荒れで絆創膏だらけの手を見せながら話すのは、愛知県で美容師として働く関口歩美さん(仮名・31歳)。美容学校を卒業後、スタイリストをしていたが、不安定な給料で生活苦になり、今年2月から大手チェーンの美容院で正社員として働き始めた。
「給料は手取り20万円。従業員が少なく、朝8時から夜20時まで働いてほぼ休憩なし。一人で店をまかされるときもあって、掃除、接客、電話対応、レジ締めまでこなさないといけません。シフト制で休みは月5日。それ以外の日に休んだ場合はどんな理由でも罰金1万円を払わないといけない。いわゆる超ブラック企業ですね」
月の支出は6万円の家賃のほか、生活費や仕事道具のローン返済などでコロナ禍以前から赤字ギリギリの状態。4月には県内のコロナの感染状況も悪化していたが休業要請の対象外だったので、お店は営業を続けた。
「通常の業務と店内の消毒作業で負担は大きくなったのに、“コロナの影響”という抽象的な理由で1万円も減給されたんです。従業員の感染予防は自己責任だと言われ、マスクや消毒液を何軒も探して自腹で購入しました。正直、1週間ぐらい同じマスクを着けて接客していたこともあります」
そんななか、京都の理髪師がコロナに感染して死亡したというニュースを見て、恐怖で仕事に行けなくなったという。
「上司に相談しても聞く耳を持ってもらえず……。不安からくる吐き気を抑えて出勤していたものの、5月は体調不良で5日も休んでしまいました。罰金は給与から天引きされ続けて5月分の月収は14万円。月の収支は完全な赤字です。コスプレイヤーのウィッグを作る副業でなんとか生活費を補塡していますが、自宅は食べかけの弁当やゴミ、洋服が散乱して汚部屋と化しています。今は仕事に行くだけで精いっぱい。家に帰っても、ご飯を食べている途中で気絶するように寝て朝になっていたこともあるくらいです」
市の支援制度が受けられないか相談しても、「正社員でお仕事されているわけなので、対象外ですね」と冷たく追い返されたという。
「政府や店の経営者に怒りはあるけど、辞めても次の就職先がないし、無職よりは働ける場所があるだけマシって思うしかありません」
―「コロナ貧困女性」号泣ルポ―
<取材・文/週刊SPA!編集部>