知らなきゃ損!別居中に相手から生活費を受け取れる「婚姻費用」とは?
コロナで夫婦仲が険悪になっている…という話をチラホラ聞きます。でも経済的な問題から、なかなか別居や離婚に踏み切ることができない妻もいるでしょう。特に子供を育てながら、パートなどで働く主婦は、ガマンしている人が多いのでは。
そんな悩みを持っている女性の一助となるのが、「婚姻費用」(通称・こんぴ)。意外と知られていませんが、別居中でも、収入が多いほうの配偶者に生活費を請求できる、という制度があるのです。
主に離婚問題に携わる森元みのり弁護士は、婚姻費用の概要を次のように解説します。
「『夫婦は互いに養う義務がある』と民法752条で定められています。そのため、別居しても戸籍上の夫婦関係が続くと、収入の多い方から少ない方に生活費全般(食費、医療費、教育費など)を支払う義務があって、それを婚姻費用といいます」(森元弁護士、以下同)。
婚姻費用を受け取る権利は、結婚してから離婚するまで続き、金額は算定表によってほぼわかるそうです。
「家庭裁判所のホームページからダウンロードできますから、誰でも算定できます」
たとえば、夫=給与が年500万円、妻=給与が年100万円、子供=1人(0~14歳)の夫婦が別居した場合、算定表によると婚姻費用は月8万~10万円。別居から離婚までの間は、この月額を夫から受け取る権利があるわけです。
といっても、夫がすんなり払うとは限りません。婚姻費用については、夫婦で話し合ってから、公証証書を作成するのが望ましいですが、難しい場合は婚姻費用分担請求調停を申し立てるといいそうです。
「ただし、不倫やDVなど、自分が別居の原因を作ってしまった当事者には、婚姻費用を請求する資格がないことも理解しておきましょう」
では森元さんがこれまで手掛けてきたり見聞きした案件で、印象深かった婚姻費用にまつわる裁判とはどんなものでしょうか?
「お子さんの教育を巡って、夫婦の意見が合わなくなって別居した40代の夫婦です。婚姻費用を巡って調停に持ち込まれると、個人事業主の夫が自分の報酬を半分と報告し、広告費などの経費の支出を倍増して、赤字申告をしました。そのため婚姻費用は数万円と定められたので、妻は高等裁判所に不服申し立てをしました。すると高等裁判所は夫の支出入を審査。夫が嘘の申告をしたとして、婚姻費用を10万円以上に定めたという事例があります」
森元さんの心を打ったのが、裁判官の判決理由の言葉だったそうです。
「お子さんは障害をもっていたので、妻が子供のために特別な教育を施していました。その費用を巡って夫婦間で対立がありましたが、裁判官は『子供のための尊い教育費』というニュアンスで、妻の子供に対する愛情をくみ取った言葉をかけていましたね」
裁判官の恩情がにじみ出たシーンだったそうですが、まさに裁判官次第ともいえますね。
別居中に、生活費を受け取れる「婚姻費用」とは?
自営業の夫が赤字を装って、婚姻費用を逃れようとした例

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