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山崎賢人『劇場』での色気がたまらない。イケメン枠→演技派への軌跡

 どうみても痛くて情けなくて面倒な男。しかも汚い。なのに色気がある。現在、Amazonプライム・ビデオと映画館で同時配信、公開中の映画『劇場』に主演している、剥き出しの山崎賢人(25)が、たまらなく魅力的だ。2010年に俳優デビューを飾り、11年目を迎えた今、役者としての評価を自らの力で引き寄せている。

そこに、不器用で面倒くさい生身の男がいる

そこに、不器用で面倒くさい生身の男がいる

(写真:『劇場』公式サイトより)

 又吉直樹の恋愛小説を、山崎と松岡茉優の共演により、『真夜中の五分前』『ナラタージュ』の行定勲監督が映画化した本作。タイトルの通り、演劇を題材に、上京して劇団を旗揚げした主人公の永田(山崎)と、彼を支え続けた恋人・沙希(松岡)の時間を映していく。  眩しく美しい恋愛ものではない。永田は、表現者としてのプライドばかりが強く、嫉妬や挫折への恐怖を内に抱えた不器用な男で、かなり屈折した“面倒くさい男”。そんな永田を、無精ひげを生やした髪の毛もぼさぼさの山崎が演じているわけだが、本作を観ての驚きは、いわゆるイケメンの山崎が、こうした見た目の主人公に挑戦したそのことではなく、永田という生身の男の匂いや空気が伝わってくる凄さ。そう、本作の山崎は青年ではなく、男なのだ

まとう空気の変化を感じさせた『一週間フレンズ。』

まとう空気の変化を感じさせた『一週間フレンズ。』

『一週間フレンズ。』

 2011年、初めての映画『管制塔』から、主演を務めていた山崎(橋本愛とのW主演)。同じく橋本とW主演を務めた翌年の『Another』などを取ってみても、もともと初期の山崎は、その後のイメージとなる“キラキラ”ではなく、どこか影ある雰囲気を持った少年だった。だがその後、壁ドンブームを巻き起こした『L・DK』や『ヒロイン失格』『オオカミ少女と黒王子』などが続き、“キラキラ”青春映画の山崎のイメージが定着していく。  同時にこれらは人気コミックが原作であることが多く、役者としての仕事が順調だったことが、かえって「実写と言えば山崎」から、ひいては「また山崎か」とまで言われてしまうことも。しかし川口春奈とのW主演作『一週間フレンズ。』では、3枚目と言えるチャーミングな役を演じて、こちらも少女コミック原作ものではあるが、確実に役の幅を広げる。ここで柔らかな空気を獲得したことが、変化をもたらしていった。
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実写化ものイケメン俳優の枠を壊していった近年
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