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米映画でネットリンチにあったアジア系女優、再び大役をつかむ

 世界的大ヒットシリーズ『スター・ウォーズ』で、アジア人女性として初めて主要キャラクターに抜擢され、話題になったベトナム系アメリカ人女優のケリー・マリー・トラン(31)。しかし、この映画に出演したことでネット上でひどい誹謗中傷を受けるようになり、SNSの投稿を全削除することになったうえ、登場シーンもことごとくカットされるといった扱いを受けた。こうした苦悩も経験したケリーだが、新しいディズニー作品でアジア人女性としては初となるヒロイン役に抜擢された。

アジア人女性が初めてヒロインに選ばれたディズニー映画とは?

ケリー・マリー・トラン

ケリー・マリー・トラン

 映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年)で一躍有名となったケリーが、ディズニーの新作『ラーヤ・アンド・ザ・ラスト・ドラゴン』に声の出演を果たすことになった。これまで発表されていたカナダ人女優のキャシー・スティールに代わり、主役の声を担当することになったという。ディズニーのアニメ作品で、東南アジア系女優が主役を務めるのは初。    東南アジアの文化をベースにした本作では、恐れを知らない戦士ラーヤが自国「クマンドラ」を救うために最後のドラゴンを探し、邪悪な力から守ろうと奮闘する姿が描かれるという。  新型コロナウイルス感染拡大に伴い、脚本、監督をはじめとする400人以上の製作陣全員が自宅から作業を行っているそうだ。全米公開は当初11月25日が予定されていたが、その後ディズニーは来年3月12日へ延期。日本公開は今のところ未定だそうだ。
 本作の監督は、オーディションの際、ケリーの実力に驚いたと語っている。 「彼女こそラーヤです。彼女は快活でポジティブであると同時に、ケリーもそのキャラクターの両方とも強さも備え持っているのです」

ネットで攻撃され、登場時間も大幅カット

 ベトナム戦争を逃れ難民としてアメリカに移住してきた両親を持つケリー。2017年の映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でメインキャストであるローズ・ティコ役に抜擢されたことで大きな注目を集めたが、映画公開直後から、ネット上で人種や見た目に関する差別的な攻撃を受けるようになった。  誹謗中傷の中には、キャラクターに対する不満だけでなく、ケリーの体重やアジア系であることをバカにしたものが多く、誕生日にまで「最悪のキャラクター」などと心ないコメントが寄せられたという。これに耐えきれなくなったケリーは、インスタグラムの投稿を全削除。アカウントは残っているものの、投稿は一つもないままになっている。
 さらに、2019年12月に公開された続編『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』では、ケリー演じるローズ・ティコの登場時間が大幅に短縮された。米メディアの調査によれば、2017年の『最後のジェダイ』では10分以上にわたり登場していたのに対し、『スカイウォーカーの夜明け』での登場時間はおよそ76秒。  制作側はローズの出番を減らそうという意図はなく、他の登場人物とのバランスを考慮してのことであると釈明したが、多くの人々から「ケリーへの差別発言や攻撃を事実上正当化した」とする意見があがり、物議を醸した。なかには、ローズ・ティコのスピンオフ製作をディズニーに提案する声もあったようだ。そうした背景もあり、ディズニーが今回、ケリーをヒロインに抜擢したことは画期的とみられているようだ。

全ての人々が“人”として扱われる世の中を生きたい

 実は、スターウォーズの出演者が過激なファンのやり玉に上げられることはめずらしいことではなく、「フォースの覚醒」から主演を務める女優デイジー・リドリーも、誹謗中傷によりインスタグラムを削除ジャー・ジャー・ビンクス役の俳優アーメド・ベストも、中傷コメントを浴びせられているうちに、自殺を考えるようになったとSNSで告白している。  そうしたなか、ケリーは2018年8月、米有名紙『ニューヨーク・タイムズ』にこんな寄稿をしている。 「有色人種の女性として生きてきて、『私は社会の隅にしか居場所がなく、人生において脇役にしかなり得ない』という自分の感情を、そうした言葉の数々が裏付けた」 「私にとって一番悲しいことは、自分のルーツである(アジア系の)文化に恥じらいを感じてしまっていること」 「自分自身よりも、世の中の声を正しいと思い込んでしまっていた」 「全ての人々が“人”として扱われる世の中を生きたい。それが私が住みたいと思える世界だし、世の中が変わるためにこれからも行動を起こしていく。私は貴重な機会を与えられ、それがどれだけ大事なことかも理解している。だから私は絶対に諦めない」 <文/BANG SHOWBIZ、女子SPA!編集部>
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