2泊3日新幹線に乗り続け、看板を目視し続けるストイックな業務も
ちなみにこちらの会社、白く巨大な看板に社名の727と大きく描かれた野立て看板でも注目を集めています。その多くは全国の新幹線沿線に点在し、詳しい場所は「知らない方がワクワクするじゃないですか」(磯島さん)という理由で、一切公開NG。SNSでは、全国各地から「あの看板の数字はなんだ!?」と目撃談が相次いで話題になっているのです。

新幹線の窓から見たことのある人も多いはずの看板広告
こちらの看板については数多くのメディアで紹介されていたり、公式HPにも特設ページがあるので割愛させていただきますが、気になったのはその“ストイックすぎる管理”です。東北新幹線、上越新幹線、東海道新幹線、山陽新幹線の沿線にそれぞれ大体5分から7分間隔で設置されているこの野立て看板。なんとメインの点検方法は、“新幹線から目視でチェック”するというのです。
その“目視の旅”は年に一度、2泊3日をかけて行われるという分刻みのストイックな旅。担当の磯島さんと、広告代理店の担当者の二人一組で新幹線に乗りまくります。
「まず朝に新大阪駅を出て、東海道新幹線で東京まで向かいます。そして上越新幹線を上下線で確認したのち、大宮駅から今度は東北新幹線に乗り換えです。看板は正式な数や間隔は企業秘密ですが、多くは10分未満の間隔で設置されているので、車内で一瞬でも気を抜くと通過してしまう。常に気を張っていますね」
看板を見つけてから通過するまではおよそ2秒から3秒ほど。その一瞬で看板が傷んでいないか、周辺の草木が生い茂って埋もれてしまっていないかをチェックするそうです。まさに職人技……!
「看板は上りと下りでそれぞれ設置されています。東北で一泊したのち、帰りは東北新幹線で東京まで戻り東海道新幹線で新大阪に到着。その足で山陽新幹線に乗り換えて、今度は博多で一泊です。分刻みの乗り換えスケジュールなので食事は駅構内の立ち食いそばで済ませることが多いです」
そして3日目は新大阪まで上りの山陽新幹線の沿線を確認し、ようやく業務終了です。
一瞬で通過する野立て看板を一日中チェックしていると、やはり体にも相当な負担がかかるそうです。
「凝視しているので目はとにかく疲れますね。また目視の旅はいつも春先から夏にかけて行うので、窓側の席は暑さと日焼けにやられます。目薬と自社の日焼け止めは必須です」
磯島さんはおよそ8年ほどこの旅を続けているそうですが、同行されている代理店の方とは「もはや無言でもお互い全く気にならない仲」になったそう。
「宿泊先のご当地の食事やお酒がなによりも楽しみ」と語る磯島さん。
つぶらな瞳のオコジョの看板をたどった先には、常にアイディアを出し続けながら独自の路線を突っ走る企業の姿がありました。
人々の心をくすぐる“引き算”の野立て看板。今後の広告展開も目が離せません。
<取材・文/青山ゆずこ>