街で見かけた“マスクつけない派”の主張「自由でいたい」
マスク着用の「お願い」が溢れている。緊急事態宣言から約半年、一日の感染者が100人を切るなかでマスクをつけない人も増えてきたが、彼らはマナーのない迷惑者なのか? 東京を代表する3つの街で、ノーマスクを貫く100人にその理由を聞いた。
「マスクをしていない理由か~。4月にコロナに感染して、抗体持っているから必要ないっしょ」(21歳・ホスト)
コロナ報道でターゲットにされた“夜の街”、そして“若者”が集う新宿歌舞伎町で、暇そうなホストがそう吐き捨てた。クラスターが多発した歌舞伎町は敏感になっているかと思いきや、歓楽街を歩く5人に1人がつけておらずノーマスク率は17%という高さに。
「未知すぎて完全防備できないから面倒くさい」(24歳・ホスト)、「マスクだけでは防ぎようがない」(22歳・居酒屋)、という自暴自棄な声が目立ったのは、コロナ疲れに起因しているのか。
心理学の視点から“日本人のマスク着用率”に注目する心理戦略コンサルタントの山本マサヤ氏はこう分析する。
「もちろんコロナ疲れはありますが、ここに来る人たちは、“嫌なものは見ない”という都合のいい情報だけを集める“正常性バイアス”が働いている人が多いような気がします。“マスクをつける必要がない理由”をどんどん集めてしまい、それを自分の中で正当化していく。
また、この街はサラリーマンと違い“一個人”で戦っている人が多いだけに、『俺は俺のやり方でやる』『面倒くさいからつけない』と、自分ルールを貫いているのも要因のひとつだと思いました」
続いて調査したのは、若者の街から“お年寄りの街”である巣鴨へ。コロナは年齢が高い感染者ほど重篤化しやすいだけに、メイン観光地である巣鴨地蔵通商店街は以前に比べて人はまばらだ。そんななかでもノーマスク率は650人中56人。およそ9%がつけていない。
理由は「だって俺、元気だもん」(78歳・無職)、「コロナ? 俺には関係ない」(74歳・無職)など、根拠なき無敵感を醸し出してきたり、「マスクがマナーになっているのが地味に嫌」(69歳・自営業)と、反発の声も多い。山本氏はこう分析する。
「歌舞伎町と巣鴨は一見共通点はなさそうなのに、『自由でいたい』『自分で選択したい』っていう気持ちがある。それにみなさん反骨精神が強い(笑)。これは“心理的リアクタンス”といって、何かを強制されると、自由を奪われると思って反発します。とくに価値観が固まりがちな高齢の方に多い」
その根拠なき自信が、いつか仇にならなければいいのだが……。
一方、ノーマスク率が3%と少なかったのは、日本有数の企業の本社が立ち並ぶサラリーマンの街・新橋だ。その希少な人たちに声をかけるも、大半が「実はマスクを持っています」(40歳・医療系)と取り出したのだ。「集団の中でマスクをつけないだけで人間性を疑われる。これって異常な感じがしますよね……」(34歳・飲食)など、マスクは持ちながらも異議を唱える声も多かった。
「組織の一員として働く人々の多い新橋は、同調圧力の集団といえます。感染防止より『誰かに何か言われたら困るから一応持っておこう』と、ただのポーズになっていたり、目的と手段が入れ替わっています」(山本氏)
確かにつけている人の中にも、「一日中あごにかけていた。つけていないも同然」(41歳・医療機器メーカー)「人目があるときだけあごから口に戻す」(45歳・派遣)という声もあった。「つけないヤツは悪」という風潮が強くなるなかで、人目を気にし “つけているフリ”をしている人々。それもまた事実だ。山本氏は「最近は『マスクをしていない人は攻撃してもいい』と、正義感が暴走しつつあるような気がします」と警鐘も鳴らす。
自粛警察、帰省警察、そしてマスク警察。マスク一枚をつける側、つけない側もともに息苦しさを感じているのが、今の日本なのだ。
コロナ疲れでつけない若者、同調圧力で外せない中年


マスクをしときゃ常識人?暴走しつつある正義感とは

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