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星野源、オシャレ化の10年。昔の“予備校生スタイル”から大変身

トレードマーク、パーカーの着こなしもオシャレに

 カジュアルスタイルも、かつてとは異なります。2019年東京ドームでの「ドラえもん」のライブ動画を見ると、オーバーサイズのパーカーを“あえて”着ているのだとわかります。「くだらないの中に」のMVで着ているもののほうが、サイズ的には合っているはずなのに、どこかだらしなく見えるのとは対照的です。  つまり、変身後の星野源は、高い意識に裏打ちされたアイデアによって、あらゆる表現がコントロールされているわけですね。好みが分かれるところかもしれませんが、現代を生きるアーティストの処世として、切実な態度なのだと思います。

「身なりが人格を作る」

 かつて、アメリカの作家、マーク・トウェイン(1835-1910 代表作に『トム・ソーヤーの冒険』、『ハックルベリー・フィンの冒険』など)は、「Clothes make the man. Naked people have little or no influence on society.」(身なりが人格を作る。服を着ていない人間は、何ら社会に対する影響を持たない)という格言を残しました。
UOMO

ファッション誌『UOMO』11月号(集英社)の表紙にも登場。誌面でも様々な服を着こなしている

 「くせのうた」や「くだらないの中に」は、確かにいい曲でした。佳曲と言ってもいいでしょう。しかし、世間に与えるインパクトを考えると、その音楽はあまりにも裸だったような気もします。もちろん、すっぴんの良さもあるのですが。  一方、「SUN」以降は、そうした手作り感とは逆の洗練に向かっているように見えます。各分野のエキスパートが集い、星野源というフィルターを通して、音楽、ビジュアルを追求していく。  星野源個人としての表現が薄れるほどに、星野源というブランドが確立されていき、その看板が、社会に対して大きな影響を持っていく。その際、洋服が重要な役割を果たしている点は、大いに考えるところがあります。  ともあれ、いろいろな示唆に富む、星野源、10年のキャリアなのでした。 <文/音楽批評・石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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