そこから11年たって、息子が進学校に入ったところからドラマは始まる。義母の援助を受けつつも、シングルマザーとして働きながら女手ひとつで息子を育ててきた杏。
そして同級生の母である蒲原まり(仲里依紗)は夫が弁護士でタワマンに住んでいるセレブ妻。だが
夫は寝室ではいつもアイマスクに耳栓をしてダブルベッドに寝る。しかも夫は自分の事務所の新人弁護士を愛人にしている。出張と偽って彼女と海外旅行をするのだが、まりは、その準備をしながら夫の携帯で愛人とのやりとりを見てしまう。

原作は恋愛漫画の巨匠・柴門ふみの『恋する母たち』(ビッグコミックス/小学館サービス)
帰国後、その愛人が妻のまりに会いに来る。妻を値踏みするかのように見る愛人の表情が興味深い。若い彼女はセレブ妻には怖じ気づかない。タワマンに住んで「97パーセントの人間を見下ろしながら」生きていても、どんなにブランドもののファッションに身を包んでいても、まりは孤独を抱えている。
そんなまりが、100年にひとりと評判の天才落語家・丸太郎(阿部サダヲ)から熱烈に口説かれる。
夫には従順で、子どもにはいい母、世間ではセレブ妻なのに気さくでちょっと跳ねていて、実は案外お人よしなところもある複雑なまりを、仲里依紗が自然に演じているのに目を引かれる。
もうひとりの同級生の母・林優子(吉田羊)はバリキャリ女性。売れない小説家の夫と、不登校で自室にこもる息子と暮らす。大手企業の宣伝部課長で、女性初の役員と目されているが、上司からはパワハラまがいの仕打ちを受け、母としても仕事人としても自信が揺らぐ日々。彼女を慕いつつライバル心をむき出しにもする若い部下の赤坂(磯村勇斗)と何か起こりそうだ。
優子は「正義の人」だ。自分の正義を貫くあまり、若干融通性に欠けるが、それもまたキャリア女性として魅力になっている。