なかでもEXILE時代のベストに挙げたいのが、「I Wish For You」(2010年 第52回レコード大賞受賞曲)です。流麗でキャッチーなメロディの繰り返しに、ヘビーなサウンドという構成は、今聞いてもなかなかチャレンジング。
となると、歌もパワーで対抗したくなるところなのですが、ATSUSHIは“吐息スタイル”を崩しませんでした。それはEXILEというグループの看板であったと同時に、ユニークな響きを成り立たせる、重要な隠し味でもありました。
ときには、“またEXILEかよ”なんて陰口を叩かれたことがあったかもしれませんが、そこまで定着するには何らかの理由があるはず。そのひとつが、多くのフォロワーを生んだATSUSHIのボーカルだったのだと思います。
今後はグループという後ろ盾がない中、声ひとつで勝負するATSUSHI。月並みな言い方になりますが、果たしてソロでも通用するのかどうか。強烈過ぎるEXILEの“アク”は、活かすも殺すも彼次第。注目しましょう。
<文/音楽批評・石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter:
@TakayukiIshigu4