――確かに大吉としては最大限の愛情を与えたのだと思いますが、どうしても娘には伝わりづらいところもあったと思います。安田さんご自身にもお子さんがいますが、どういう親でありたいと思っていますか?
安田「
理想は、自分にないところ全部です」
『ホテルローヤル』より
――ないところ全部?
安田「いつも寄り添い、成長する過程で常に支え、彼女が困っているときには、それを手助けできる具体的な技術があり、勉強が行き詰まれば教えてあげることができ、朝ごはんを作ってあげることもあり、一緒に散歩して、和気あいあいと会話をして。そういう親子関係を、子どもが巣立つまでずっと続けて、巣立ったあとも、お父さんやお母さんのことを大好きに思ってくれていつも帰ってきてくれる。そういう親だといいですね。全くできてないですけど(笑)」
――(苦笑)。これだけは実際にできているぞということは?
安田「『ただいま』と『おかえり』を言う。それくらいですね」
――本作は一歩への背中を押してくれますが、女子スパの読者は、一度は踏み出した経験があるのだけれど、その先で迷っているという人も多いと思います。安田さんも、一度就職されたあとに、役者へと方向転換された経験があります。迷っている女性たちに何か言葉をいただけませんか?
安田顕さん
安田「そうですね。『グチグチ考える自分が嫌なら、グチグチ考えなきゃいい』というのは、嘘だと思います。
グチグチ考えている自分を否定しないようにしてください」
――安田さん自身も、グチグチ考えている時期があった?
安田「ずっとそうです。弁の立つ人は、それはそれで素晴らしいですけど、でも弁が立たなくて、相手を慮って大したことも言えないことがあるとして、それを必要以上に否定しないでください。ディベートができる、ディスカッションに長けている、コミュニケーション能力が高い。素晴らしいことです。
でも自分がそれに到らないとしても、あなたが何かを発するまでに、心の中では色んな事を考えているはずです」
――そうですね。
安田「そうやってグチグチ考えることは決して悪いことじゃないです。すべてを否定しないほうがいいですよ」
――ステキなアドバイスをありがとうございます。最後に、映画公開へのメッセージをお願いします。
安田「きっと30代、40代の女性にとって必要な映画だと思います。感じていただける映画だと。そう、40代後半のおっさんは思います」
(C) 桜木紫乃/集英社 (C) 2020映画「ホテルローヤル」製作委員会
<文・写真/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi