最初は美味しいと感じていた奥さんの手料理も次第に食べることが苦痛になってしまったそうです。なんとかできないかと頭を悩ませていたある日、たまたま夫婦の通帳を見ると結婚してから貯金がほとんど増えていないことに気づきます。
家計の管理は奥さんに任せていましたが、彼女を問い詰めたところ、衝撃的な事実を知らされたのです。
「夫婦2人しかいないのに毎月の食費がなんと15万円、多いときは20万円を超えている月もありました。どおりで貯金ができないはずです。そこまで安月給ってわけでもないのにエンゲル係数が50%以上っていくらなんでもありえないですよ!
妻は普通のスーパーなどを一切利用せず、オーガニック系の食材や調味料を幅広く揃えている専門店や高級スーパー、ネット通販などで買っていたんです。たった100グラムで1000円以上の天然塩とか平気で買ってたら、そりゃお金がいくらあっても足りませんよ。
それなのに『食事にお金をかけて何が悪いの!』ですからね。逆ギレではなく本気でそう思っているのにはア然としました」
それからは自分が家計を管理。妻には1か月の食費+生活費として10万円を渡しましたが、それも10日も経たないうちに高級オーガニック食材の購入ですべて使い切ってしまいます。

「妻は結婚後、本人の希望で専業主婦になっていたため、人並みの生活はできても湯水のごとく高級な食材や調味料を買う余裕がウチにはなかったんです。
それで食事は作らなくていいからと話したのですが、私が自分用に買い置きしていたカップ麺や冷凍食品も妻は勝手に全部捨ててしまい、ちょっと常軌を逸しているというか怖くなりました。それで妻の両親に事情を説明し、しばらく義実家で預かってもらうことにしました」
いったん距離を置いて冷静になってもらい、そのうえでの再構築を考えていましたが、しばらくして妻は離婚を申し出ます。浅田さんにも説得してまで婚姻関係を続けようとの強い意思はなく、わずか1年半という短い期間で夫婦生活にピリオドが打たれます。
「家には使い切れない量の食材や調味料のストックが残っていたため、保存の利くものは実家や兄夫婦にあげました。家に置きっ放しにしていたら彼女とのあまり思い出したくない記憶が蘇ってしまいそうだったので。
けど、なぜあそこまでオーガニックにこだわったのか今でも理解できないんです。それさえなければ上手くやっていけたと思うのですが……」
口に入れるものなので食材や調味料が気になるのも理解できますが、こだわりすぎるのは別のものを失うことにつながるのかもしれませんね。
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私の〇〇依存―
<文/トシタカマサ イラスト/とあるアラ子>
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。