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義父の性的虐待のせいで「セックス依存症」に。専門家が理由を解説

 セックスや自慰行為などの性行動を強迫的に繰り返してしまい、それが原因で社会的損失や身体的損失、さらに経済的損失を被ってしまう「セックス依存症」の問題。昨今は芸能人の不倫スキャンダルなどがきっかけとなり、依存症の一種として広く知られるようになりました。  ソーシャルワーカー(精神保健福祉士・社会福祉士)として、長年さまざまな依存症分野の臨床に携わる斉藤章佳さんの新著『セックス依存症』(幻冬舎刊)では、セックス依存症に悩む女性の実例がいくつか紹介されています。今回は、そのなかの一例を紹介してもらいます。(以下、斉藤さんの寄稿)。 【前回記事】⇒両親の性行為を見てしまい「セックス依存症」に。なぜ?専門家が解説

過去の性的虐待が原因に……

20代女性・Bさんのケース
スマホ 悩む 女性

※画像はイメージです(以下、同じ)

 都内の百貨店で販売員として働くBさんには、いまだ癒えない心の傷がある。義父から受けた性的虐待の経験だ。  彼女はシングルマザー家庭で育った。中学生のころに看護師の母親が再婚し、義理の父親と暮らすようになった。しかしその後、Bさんは酒に酔った義父からレイプされてしまったのだ。当時、母親は夜勤で不在だった。  事件後、何度も母親に相談しようとしたが言い出せず、義父の性的虐待は高校卒業まで続いた。やがて周囲の男性に対しても不信感を抱くようになっていったという。  Bさんは高校卒業後、義父から離れたい一心で地元を離れて上京。就職してひとり暮らしを始め、すぐに職場の先輩の紹介で年上の恋人ができた。彼には性被害の経験は打ち明けなかったが、はじめてのセックスはとても優しいもので、Bさんは「大切にされている」と感じた。  しかしほどなくして、恋人の浮気がきっかけで交際は終了。Bさんは新たな恋人を探そうとマッチングアプリに登録した。デート相手は面白いように見つかり、なかにはその日のうちに刹那的に肉体関係に至る人もいた。「セックスしているときは自分のことを愛してもらえている」と感じたという。やがて多い日には、1日3人もの男性とマッチングアプリ経由でセックスをするようになっていった。  彼女の経験人数はもうすぐ300人を超えようとしているが、セックスをしても心は満たされないどころか、終わった後はとてつもない空虚感と罪悪感が残る。  また性行為の後にシャワーを浴びていた際、財布から現金を抜き取られるなどの金銭トラブルにも遭った。さらに先日は性器に痛みを感じ、急いで医者に駆け込むと性感染症と診断されてしまった。

性行為のときだけ必要とされている感覚

 セックス依存症の女性には、家庭内の性的虐待や性犯罪被害など、過去の被害体験が大きく影響しているケースが見られます。  私が臨床現場で関わってきた方のなかにも、過去に実父や義父、兄弟や親戚などからの性的虐待に遭ったことのある女性は少なくありません。聞くに堪えないような虐待をされて育ったせいで自己評価が極端に低下してしまい、セックスの最中に相手に抱きしめられて優しくされると、そのときだけ「自分が必要とされている」と錯覚してしまいます。そうして、好きでもない相手とであっても、性行為そのものにのめり込んでしまうのです。  セックスをすることで自分が抱えている心の痛みや不安を一時的に棚上げすることは、「性的トラウマの自己治療」ともいえます。そしてセックス依存症で悩む女性のなかには、それが影響して結果的に風俗店で働くようになるケースも少なくありません。
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複数の依存症を併発する「クロスアディクション」
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