「女性芸人は結婚するとセミリタイア感が出る」紺野ぶるまが語る葛藤
これまでの人生を綴った著書『「中退女子」の生き方』も話題を集めている女性芸人・紺野ぶるまさん(34)。ベルを“チン”と鳴らしてからの一言で落とす独特な“謎かけ”などを引っさげ、お笑い賞レースでも活躍しています。
女性芸人のあり方が、変わりつつある今。「高校中退」「お笑い芸人」という経歴について聞いた前回に続き、紺野さんから見たお笑い界の現状、そして、2019年4月に結婚して以降の仕事に対する変化などを聞きました。
――紺野さんは、お笑い賞レース「R-1グランプリ」や「THE W」でも活躍してきました。昨今、女性芸人への風向きも変化しつつある一方、お笑いの世界での男女差を感じますか?
紺野:やっぱり、感じます。そもそも女性であるだけで、一つの要素が乗っかっているじゃないですか。例えば、学校の先生を演じるコントでも、女性芸人の場合には「女教師」という設定が一つ乗っかってきますし。前もっての説明もなく、生徒役の相手に対して「お前、またタバコ吸って」みたいにつぶやくと、気の強い女教師なのかと感じさせてしまうし、とがっているように見えてしまうから、フラットではないと思います。
それに、体を張れないのも差ですよね。思いっきり殴られて痛がるとか、裸芸とか。裸になりたくないわけではなく、なれないことがお笑い芸人をやる上で恥ずかしいというか。私はお笑い芸人になってから1年目で、もうあきらめたんですよ。男性芸人と同じ土俵で勝つのではなく、あきらめてからやったほうが勝てると考え続けてきました。
――デビュー当時、紺色のブルマを衣装にしていたのも、その思いがあったからなんでしょうか。
紺野:自分なりに振り切ったから、できたのかもしれないです。本当、女性であることで、いろいろと経験してきたんです。楽屋や舞台袖で、男性の先輩芸人からセクハラを受けたこともありますし。他の女性芸人からも、男性の先輩芸人に急遽誘われた飲み会で胸を揉まれて、拒むと「女を捨ててないな」と言われた話を聞いたこともありました。そうしたことをしてくるのは、たいていは売れていない男性の先輩芸人でした。売れている芸人さんは、そういうことは言ってこない。私たちを「一人の人間」として見てくれることが多いです。
――2019年4月に、結婚されました。著書の中では、お母さんから「芸人やめて就職しなさい。それで頼むから結婚して子ども産んでくれ」と言われたこともあると明かしていましたが、今の関係性はどうですか?
紺野:たぶん、一つの大きな保険に入ったくらいに思っているのかなと。母は、私が賞レースの決勝に行こうが、テレビに出演しようが「結婚して子どもを産む」のが幸せだと思っているんですよ。子どもがいるから「働かなくてはいけない」という考え方だろうし。「R-1グランプリ」の決勝へ行けば変わると思っていたけど、結婚してほしいというスタンスも変わらなかったんですよ。でも、私が結婚できたことで母の態度も少しやわらかくなった気がします。
――娘の人生をようやく認めてくれたのかもしれませんね。一方で、女性芸人としては、結婚後の変化をどう感じていますか?
紺野:周りからの見方が変わったし、女性芸人が結婚すると“セミリタイア感”が出るのかなと。男性芸人は結婚すると「家族を養う」という大義名分ができるし、仕事に拍車がかかると思うんですよ。でも、女性芸人は逆で。自分ではそんなつもりないのに「頑張らなくてもいい人なんだ」と思われる気がして。旦那との交際期間中も周りからは慰めのように「まだまだ結婚できるよ」と言われていたけど、彼氏がいない前提で、どこか“負け組”ポジションに見られている感じでした。
ただ、お笑い芸人としては、独身時代のほうが自分のポジションを取りやすい感覚もありました。お笑いは見下されてなんぼだし、イジられてなんぼだから。結婚によって、発言の一つひとつがマウントになっていないかと気にするようになりましたし。男性に対して「独身ですか?」と振って「結婚してましたか。じゃあ、いいや」と気軽にからむような流れも使えなくなった気はします。
芸歴1年目に「先輩芸人からセクハラを受けた」
「結婚して子どもを産んでほしい」という母
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