――虐待の事件があったとき、児童相談所はどうしていたんだというバッシングもありますよね。
岡田「児童相談所ももちろんいろいろ変わっていかないといけないところもあるのですが、児童相談所だけでは無理というところがあります。私たちのようなNPOや民間団体や企業も含めてそこでもできることがあります。あとは、地域の人もできることがあるんです。そういう家庭に入るのは必ずしも専門家がいいとは限りません。私たちも年齢性別資格経験問わずスタッフの募集をしているんですけど、みんなできることがあるんです。
実際に虐待のリスクがあって弱っていたり、いろんな背景がある人のもとに児童相談所や行政、専門家が来て指導をすることになっても拒否されてしまうことがあるのですが、近所のおばちゃんみたいな人がお掃除や手伝いに来てくれて心を開いた親御さんもいます。他にも、
若年の親御さんで心配をしているご家庭に80代の地域の人が入っていったら、それまでは全部拒否していたのにそのおばあちゃんなら来てもいいよ、となったケースもありました。
このような地域の普通の人たちの力はとても大事です。アメリカでは、本当に分離して保護しないといけない状況では専門家が必要なのですが、予防的な観点だと非専門家が親の強みを活かすとか、批判や指導じゃなくて、できているところを認めて寄り添って親をサポートすることに効果があるという調査結果が出ています。ですので、日本もそうならないといけないなと思うところがあります」
コロナ前と今で虐待の状況は変わらないほど元々が大変

――昨年からのコロナ禍で家にいる時間が増えたことでDVが増えたニュースはありましたが、虐待のほうも増えているのでしょうか?
岡田「コロナで大変な状況になり、虐待は増えていると思います。
ただ私たちが伺うご家庭にはもともとコロナ以前からの貧困の問題があってコロナではびくともしないぐらい大変なところもあります。コロナ以前とコロナ禍でも支援はずっと続いています。ただ、コロナだから家にうかがうのを拒否されてしまうことは一時期あって、それで見守りができず心配していたことはありました」