オダギリジョーは、この国のもっとも優れた俳優のひとり
――今回、兄弟役を演じたオダギリジョーさんは、池松さんにとってどんな先輩ですか?
池松「うまく伝わるか分かりませんが、最後の日本映画史と言えるような俳優さんではないかと思っています。なにかこの国の映画史、俳優史を感じますし、さらに誰にも似ない独自の表現を追われてきた方だと思います。何より俳優という同業者として見ると、
あの技術と物事を選ぶセンスと、目の奥に宿っている情深さと知性とユーモアの深み、本当に格が違うんです。この国のもっとも優れた俳優のひとりだと思っています」
――池松さん演じる剛は、子どものころに“天使”を見たことがあります。池松さん自身が子どもの頃、なにか衝撃的な出会いをした経験は?
池松「なんかね、座敷童(ざしきわらし)を見た気がするんですよ。今聞かれて思い出しましたけど(笑)」
――ええ!?
池松「昔住んでたマンションに、夜、トイレに行ったときに洗面台の横のスペースのところに、いたんですよ。僕が4、5歳くらいのときの話ですが」

『アジアの天使』より
――というと、まだ“座敷童”というものへの知識がないころの出来事ですよね。
池松「確かにそうです。後から考えると『座敷童だったのかな』という。目があって一瞬動けなくなったんですよね。夢だったのかなぁ(苦笑)。そこは6歳のとき引っ越ししてしまったんですが、何階に住んでいたかは忘れましたけど、今も住んでいた頃のことをふと思い出します。すごく不思議なマンションでした。窓を開けると、家の前の電線にフクロウがよく来てたんです」
――福岡ご出身ですが、自然が豊かだったのでしょうか。それにしてもフクロウは珍しいですね。
池松「近くに山があったりはしましたが、珍しいですよね。家族みんなで『また来てるね』と言いながら見てたんですけど。こんな話でよかったですか?(苦笑)」