
「おひとりさま」という言葉が定着して久しいですが、老後はこちらが意識しなくても「おひとりさま」になってしまうもの。本書に登場する男性は、「妻の死後に3つの保険に入った」と言います。
保険といっても金融商品ではなく、人間関係の保険です。分譲マンションに住んでいた男性は、「
自治会の役員を引き受け、市民講座運営委員会の委員になり、カラオケサークルに入った」そうです。これらすべてに人との交流がありますよね。
老後は自ら進んで「おひとりさま」であることを公表し、
「おひとりさま」の危機を救ってくれる人間関係を構築するのがベスト。何かあっても誰かが発見してくれる、という安心感は心身の健康にもつながると思うのです。
高齢と呼ぶにはまだ早い50歳の私ですが、それでも体の衰えを実感するたびに凹みます。とはいえ、この凹みが年々増えていくのは目に見えているのです。シミやシワも増えていくし、とため息をついていたら、同じ美容院に通う70代の女性が「美容整形にハマっている」という話を聞きました。なんでも「この年齢になったら、今さらどういう顔になっても驚かないし、むしろ変化が楽しい」と笑うのです。

本書にも「
いやなこと、つらい出来事もちょっと俯瞰して眺めて笑いに変えてしまうと、けっこう気分が変わるもの」とユーモア精神を推奨しています。あの美輪明宏さんにしても「世界を変える言葉は『ルンルン』」と提案。「今朝は肩が痛いわルンルン」とか「トイレで立てなくなったわルンルン」とか、ヤレヤレな事実をユーモアで締めくくると、新たな活力が生まれてくるのです。
「忙しさと笑いがあれば、たいていのことは乗り越えられる」
無視できない「老い」と「高齢社会」の現実を、知恵とユーモアで切り込む本書。10年後、20年後を見据えた必読書と言えそうです。
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小説家・森美樹のブックレビュー―
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx