――コロナの持続化給付金や家賃支援給付金の対象から性風俗事業者が除外された件についてどう思いますか?
石川「
性風俗産業が『本質的に不健全』だから給付金対象外にされた件については、ほかに合理的理由が見つからなかった、国の苦し紛れの言い訳なんじゃないかと。現在、大阪のデリバリーヘルス事業者が国を相手取った訴訟が注目を集めていますが、法を遵守し納税している性風俗事業者を対象外にすることにより、セックスワーカーへの偏見がどんどん強くなることを危惧しています。また、業界の中でまともな店を潰して何がしたいのかと。
そもそも、『本質的に不健全』と国が宣言するなら、なぜ、性産業を法律で認めるのでしょうか? 貧困、病気、障がいで生活できない、子供を育てられない人たちはどうやって稼げばよいのですか? 風俗をバッシングして生活保護を受ければ良いと簡単に言う人もいますが、生活保護は権利だと思いますが、生活保護は受けたくないという人もいる。生活保護世帯も大変だから。万能な制度と言えるでしょうか。生活保護世帯で育って、そこから抜け出したくて夜業界で働く人だっています。
私のように夜の世界で働くことにより、生活を立て直すことができた人もいます。性風俗業界では30万人以上が働いていると言われていますが、恐らく数字に出てこない人もたくさんいるでしょう。その人達のバックグラウンドは多様で、働く理由も様々。
やりたくないけど子供のために頑張って働いている人もいれば、やりがいをもって働いている人もいる。子供の受験や修学旅行のために、毎日必死で働いている人達がいるんです。そんな思いで働いている人達の職業を、根本的な解決策や代替案もなく国や社会が排除することに激しい怒りを感じています。
個人的には性産業はなくならないと思っています。もし違法にすれば、アングラ化し、もっと危険性が高くなるだけ。現在、性産業界全体は健全化へ向かっています。もちろん、なかには悪質な業者もあり、そういった業者はなくなっていってほしいと思いますが、夜職に対する偏見が強くなればなるほど、そこで働く人達が自分になにかあったときに相談しづらくなってしまう……」

――特に性風俗で働く女性は被害者だというステレオタイプがありますよね。
石川「被害者だというのであれば、その被害を起こした原因を追求すればよいのに、『あの人達は可哀想だから、性風俗業を廃止しろ』と言うだけで満足している気がします。性産業はわかりやすいターゲットなんです。敵にしてバッシングすれば、自分の正義感が満足する。福祉制度について社会に問題提起するよりも、社会規範から逸脱した存在を叩き、自分のストレス解消のはけ口にしているのではないでしょうか? でもそれは、何の問題解決にもつながらないと思っています」