――「ハピママメーカープロジェクト」がフードパントリーを始めて約1年経ちますが、困窮する夜職のシングルマザーは増えていると感じますか?
石川「
増えていますね。私のところだけではなく、どこのフードパントリーや子ども食堂も予約ですぐにいっぱいになります。いまは先着50世帯に食料を届けていますが、あっと言う間に予約が埋まります。1年前に始めたときは15世帯に届けていましたが、メディア様に取り上げていただくたびに、個人様や企業様からの寄付が増え、そのおかげで50世帯分を提供できるようになりました。けれども、マンパワーの限界があり……。
現在、50世帯プラス、緊急支援として月3件ほど、埼玉件から県外にまで郵送で食材を送っていますが、運搬や引き取りが課題です。というのも、食材を寄付してくださる企業さんへ日中に食材を取りに行かなくてはいけない場合が多く、私たちも昼間の仕事をしているので難しく……」
夜の世界で働く人達に知ってほしい、「確定申告」の大切さ
――「ハピママメーカープロジェクト」はフードパントリーのほかにも、確定申告勉強会なども開催していますね。
石川「フードパントリーのときに、確定申告勉強会、母子それぞれに向けた無料学習塾、新ママさんための看護学校へ行くための資料、無料低額診療所の情報などを渡しています。
確定申告の仕方が分からないから行政に頼れないナイトワーカーもいます。現実には、
確定申告をすれば、保育園や家賃補助に申し込めたり、個人事業主としてコロナ持続給付金にも申し込めました。
セカンドキャリアへ向かうにも、これまでの職歴をどう書いてよいか分からない人も多いのですが、
セラピストとして開業届けもできます。きちんと確定申告をしていれば、自分の存在証明や職歴になるので、自分の身を守るためにも、納税の意識は夜の世界で働く人達に高めていきたいと思います」
今後の目標はシングルマザーのための「通い型のシェアハウス」
――「ハピママメーカープロジェクト」の今後の目標は何でしょう?
石川「
シングルマザーのために、通い型のシェアハウスをやりたいと思っています。1階は託児所、2階はお母さんが子供と離れて休憩や勉強ができる場所になる、シェアハウスを開きたいですね。いま私が勤めている会社は、ちょうどお母さんたちの就労支援やシェアハウスプロジェクトを行っているので、そこから学んだことを団体の活動にも活かしたいと望んでいます。
食料や経済支援のほかにも、“心の支援”が大切だと思っていて、フードパントリーでも、できるだけ“
つながり作り”を重視しています。なぜなら、
夜業界は人と人が“つながらないこと”が一番の問題だと感じるから。子供が遊べるスペースやイベントを提供して楽しんでもらう。そのなかで関わりを重ねていくうちに、誰かとつながることで精神的に楽になってほしいです。これからも当事者目線で、一方で当事者には色々な考えをもった人が存在するという意識を忘れずに『ハピママ』の活動を広げていきたいと望んでいます」
【石川菜摘(いしかわ・なつみ)】
「
ハピママメーカープロジェクト」運営者。国立大学卒。在学中から鬱病発症し公務員になるも、隔離病棟へ。退院後再度「夜の世界」へ。風俗などの夜職も”仕事”の一つ。困った時の生活保護などの福祉制度の利用は権利。現在他数名の当事者と共に夜職シングルマザー向けフードパントリー :食材無償提供活動(シングルファザー、単身生活困窮の方も対象)や交流活動を実施。”ママ”=子育てに携わる全ての人。Twitter:
@happy_mama_nats
<取材・文/此花わか>
此花わか
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):
@sakuya_kono