篠原涼子・市村正親の離婚にみる「年の差婚」の落とし穴とは
妻は柔軟になっていくのに対し、夫は頑固になるケースも
人間関係は生ものだから、時間が経てば関係性も変わる。一般論だが、年の差についても、一緒にいればいるほど感じなくなるカップルもいるだろう。逆に時間が経つにつれて女性のほうはさまざまな経験を積んで柔軟になっていくのに対し、すでに円熟していた夫は変わらないか、もしくは頑固になるケースもある。そんな場合、妻側は実年齢以上に年の差を感じるだろう。
実際にそんな経験をした女性がいる。ヤスエさん(47歳)は3年前に離婚したばかり。24歳のときに48歳の男性と結婚した。二回り年上の男性との結婚は母親に大反対されたが、幼い頃、父を病気で亡くした彼女にとって、年上男性は理想の人だった。恋人であり父でもあり、誰よりも近くて理解してくれる存在だったのだ。
既成事実を作ってしまおうと避妊をせず、妊娠を機に結婚、ふたりの子をもうけた。ところが12年後、夫が定年退職をしたとき彼女はふと思った。
「私はまだ30代なのに、夫はもう60代なんだ」
夫は退職後も別の会社で働いていたが、50代後半くらいから徐々に気難しくなっていき、60代以降はさらにそれがひどくなっていった。
「自分が老いていくことへの恐怖感があったんでしょうね。私の行動を把握したがったり、飲み会に行くなと束縛したり。やたらとジムに通って鍛えるようになりましたが、精神的には不安定になっていたと思います。そんな夫を見ているのは楽しくなかった」
そんなとき彼女に好きな男性ができた。相手は10歳年下の既婚者だ。お互いに思いはあったが、ヤスエさんは夫を裏切ることはできなかった。
下の子の高校卒業時に離婚を申し出た
夫は黙って離婚届に判を押した。それが夫の最後のプライドだったのかもしれない。離婚届を出したとき、彼女は「自由を得た」と感じたそうだ。
「とはいえ、元夫は私にとって大事な人には変わりありません。結婚生活を解消しただけで、長年の人間関係を解除したわけではない。離婚後、私は子どもたちと暮らしていますが、子どもたちは父親のところへ自由に行き来していますし、私も元夫と子どもたちと食事をすることもあります。
関係を自由にしただけで、元夫に対しても優しくなれた。元夫もひとりになっていろいろ考えたんでしょう。いずれは高齢者向けのマンションに入るつもりだそうです」
冷たいと思われるかもしれないけど、と彼女は何度も言った。だが婚姻制度から脱する関係も、これからの時代はひとつの選択肢になるはずだ。
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<文/亀山早苗>
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亀山早苗
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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