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不評の五輪閉会式で、「東京音頭」のベタさがウケた謎

東京音頭ぶっこみに、小さく踊った選手も

選手たち

お疲れの選手たち。そりゃそうだ(代表撮影:雑誌協会)

 そんな雲行きが怪しくなりかけた閉会式の空気を一変させたのが、東京音頭でした。文脈ガン無視で、あのふざけたお囃子が無観客の国立競技場に鳴り響く。カオス? 多様性? んなもん知らねンだわといった具合で、ひょうひょうとフルコーラス鳴り響く。
東京音頭

ネットも「まさかの東京音頭ww」と、のけぞりつつ盛り上がっていた(代表撮影:雑誌協会)

 するとどうでしょう。ダイバーシティ発表会パートでかったるそうに座り込んでいた外国人選手たちが、見よう見まねで盆踊りを踊りだす。日本独特の小さな手足の動きをかわいらしく真似ることで、少なくとも閉会式に参加する意思を見せ始めたのです。もちろん、満面の笑みでノリノリとまではいきませんでした。それでも、この摩訶不思議な音楽に興味を示してはいました。  スカパラのように熱いビートもなければ、大竹しのぶみたいに涙を誘うバラードでもない。東京音頭は、音も言葉もただ空気に溶けて消えていく。その冷ややかな情緒が、したたかに国際性を獲得した瞬間を目の当たりにしたのです。  なにかにつけて横文字を借りなければ説明できない出し物よりも、超絶ドメスティックで、国際性や時代性のかけらもない盆踊りが、海外選手の身体を動かした。この事実を見過ごすわけにはいきません。

有楽町の商店街がビクターに作成を頼んだ「東京音頭」

 そして、この東京音頭が、文化も伝統も関係ないところから生まれた点も押さえておきたいところです。関東大震災後の景気回復を願い、昭和7年、有楽町の商店街の旦那衆がビクターレコードに作成を依頼した「丸の内音頭」が始まりだったといいます。それが「東京音頭」と改題され、プロ野球・東京ヤクルトスワローズの応援歌としても定着しました。
盆踊り大会

第17回(2019年)日比谷盆踊り大会のポスター。これ以来、コロナで休止に

 2003年以降は、日比谷公園の盆踊りで毎年、外国人も含む多くの人が踊る光景も有名になりました。2018年に亡くなった日比谷松本楼の前会長は、「いつか東京五輪で盆踊りをやりたい」と自民党の国会議員に頼んで回っていたのだそう(朝日新聞デジタル、2021年8月2日より)。  こうして泥臭く生々しい生活に揉まれてきた東京音頭が、ダダすべりする空虚なコンセプトを救った構図は、なかなか痛快でした。  この一点だけでも、東京五輪を開催してよかったと思います。
大竹しのぶ

最後は、走り回る大竹しのぶと子どもたちに、どうしていいかわからなかった(代表撮影:雑誌協会)

<文/音楽批評・石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)
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