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ムーミン作者を描いた『TOVE』。同性の恋人、父との確執etc.を監督が語る

 “ムーミン”の原作者トーベ・ヤンソンの半生を描いた映画『TOVE/トーベ』が公開中です。本作で描かれるのは、ムーミンを生んだレジェンドではなく、アーティストとして、人間として自分を確立する以前のトーベの姿。舞台監督をしていた女性ヴィヴィカとの激しい恋も描かれます。
“ムーミン”のキャラクターたちにはモデルがいた。『TOVE』監督インタビュー

『TOVE』より

 ザイダ・バリルート監督へのオンラインインタビューで、トーベが周囲から受けた影響について聞きました。 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます

今はレジェンドのトーベも、若い頃はもがいていた

――“ムーミン”は日本でも大変人気がありますが、トーベの姿を写真で見たことはあっても、実像はあまり知られていません。フィンランドではどうだったのでしょうか。
ザイダ・バリルート監督

ザイダ・バリルート監督

ザイダ・バリルート監督(以下、監督)「トーベは、フィンランドでもっとも愛されているアーティストと言っていい存在ですので、作品のことはもちろん、彼女のことも知られています。しかし、そのイメージは晩年のものがほとんどです。なので、フィンランドでもあまり知られていない彼女の若い頃に目を向けようと思いました。いわゆるレジェンドというところは少し横に置いて、アーティストとして、人間としてアイデンティティとまだ格闘しているトーベです」 ――トーベがアーティストとしてあれほどもがいていたのは意外でしたが、何か嬉しかったです。 監督「敬愛しているからこそ、彼女をよりヒューマンに描きたいと思いました。台座にいるようなトーベではなく、ちょっと降りてきてもらって、観る人に身近に感じて欲しいと。彼女だって若い頃はこんなにもがいていたのです」 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます

トーベは母親の人生を受け入れるのが難しかった

ムーミンママのモデルはトーベの母親

『TOVE』より

――父親との確執や、ムーミンママのモデルと言われる母親の存在も印象に残りました。 監督「両親の影響はすごく大きいものだったと思います。ご家族自体はとても仲が良く、特に母親とは生涯非常に仲が良かった。その関係だけで1本の映画ができるんじゃないかと思うくらい。この映画では違う部分をフォーカスしたので、そこは深く描けませんでしたが、どうしても登場させたいと思いました。 いわゆる絵画や彫刻などを作って認められるアーティストになってほしかった父親との間にあった、ある種の緊張感もそうですが、トーベにとって、受け入れるのが難しかったことのひとつが、母親の人生だったのだと思います」 ――というと?
トーベは母親の人生を受け入れるのが難しかった

『TOVE』より

監督「母親も素晴らしいアーティストだったんです。それが家庭を支えるために、本来のアーティストの活動ができなくなった。偉大なるアーティストの場が父親だけに用意されていたことが、なかなか受け入れ難かったのだと思います。トーベが家庭を望まず、アーティストとしての自分に全てを捧げていくのだと決めたのは、おそらく母親の姿を見ていたからじゃないかと思います」
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ムーミンのキャラクター達にはモデルがいた
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