「冷蔵庫を買い換える話になったとき、これがほしいのよねとカタログを見せたら、夫は一瞥(いちべつ)もせず『いいんじゃない? 好きなのにすれば』って。でも高いのよと言うと、『オレに買えないくらい?』と。ああ、夫はそこにプライドを持っているんだなとよくわかりました。
夫に買える買えないの話ではなく、一般的に冷蔵庫にかける対価として高いのではないかという話をしているのに、夫は言外に『オレにとって高い冷蔵庫は世の中にないはずだ』と言いたげでした。
『高いとは思うけど、それで便利になるならいいんじゃないかな』と言ってくれるのが“同じ目線”だと思うんですよね。まあ、専業主婦だからこっちにも若干、遠慮はある。それをくみ取ってくれない」
些細(ささい)な不満かもしれない。贅沢(ぜいたく)な不満かもしれない。だが、「オレの経済力」をちらっとでも見せられると、妻としては「圧」を感じてしまうのだとカナエさんは言う。

おそらく男性は「尻に敷かれたほうがうまくいく」「妻にはかなわない」ということで、自身が女性と争う気などみじんもないと言いたいのだろう。
それはわかるのだが、根底に「男のほうが上だから女性を大事にしなくてはいけない」「揉(も)めるのは面倒だから、最初から女性には白旗をあげておいたほうがいい」という気持ちが無意識のうちにあるのではないだろうか。いずれその「無意識の意識」が表に出てこなければいいのだが。
<文/亀山早苗>
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