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俳優・升毅、急死した監督への思いを胸に、“漂流ポスト3.11”を訪れ感じたこと

 映画『八重子のハミング』などで知られる俳優・升毅(ます たけし)さん(65)がナビゲーターを務めるドキュメンタリー『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3・11をたずねて』が、全国順次公開中です。
俳優・升毅、盟友への思いを胸に“漂流ポスト3.11”を訪れ、感じたこと

升毅さん

 2020年に、升さんの盟友・佐々部清監督(『半落ち』『夕凪の街 桜の国』『ツレがうつになりまして。』ほか)が逝去しました。升さんは本作で、東日本大震災の被災地での映画作りを考えていたという佐々部監督に思いをはせながら、監督ゆかりの人物や地を訪れ、また、“漂流ポスト3.11”にも足を運びます。 “漂流ポスト3.11”とは、岩手県陸前高田市にある郵便ポストで、亡き被災者への手紙を出せるポストとして、2014年にカフェの店主・赤川勇治さんが設置しました(カフェは現在閉店)。震災の犠牲者にかぎらず、亡くなった人への手紙が、今も全国から届き続けています。  大切な人への思いを受け取り続ける“漂流ポスト3.11”。自身も大切な人を亡くしたばかりの升さんは、本作を通じて何を思ったのか……。お話しいただきました。

本作のナビゲーターは僕しかいない

――佐々部監督の急死から始まったドキュメンタリーということで、スタートから辛い思いの作品だったかと思います。
本作のナビゲーターは僕しかいない

『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3・11をたずねて』より

升毅さん(以下、升)「佐々部監督が、“漂流ポスト”を題材とした作品で動いていたことは知っていました。亡くなったことによって、僕がナビゲーターで入ったわけですが、声をかけていただいたときは『よくぞ、僕に』という気持ちでした。その時には、自分自身にも向き合うことになるといったことは考えていなかったのですが。佐々部監督に関わる作品ならば、『いまこれをやるべきなのは僕でしょ』と思っていたので、使命のような気持ちでした」 ――升さんの役者人生のなかでも、佐々部監督と出会われたのはそんなに早い段階ではないですよね。それで「僕でしょ」と思える存在に巡り会うって、すごいことですよね。 「すごいことだと僕も思っています。監督との最初の作品が『群青色の、とおり道』(2015)ですから、約6年間だけなんですけど、お互いを認め合ったところからのスタートで、お互いにリスペクトしていることが分かっていました。だから必然的に時間を共有することが増えていき、作品はもちろん、やりとりがずっと続いていたんです」
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“漂流ポスト3.11”を訪れて
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