――本作は、佐々部監督への想いと、“漂流ポスト”と周辺の人々の話が平行して進んでいきます。実際に“漂流ポスト”を触ったときの感覚はどんなものでしたか?

『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3・11をたずねてより
升「このポストが、大切な方を亡くした人々の想いを受け止めているんだなとか、この人(赤川勇治さん)がそれをずっと守り続けているんだなと、今までの経験のなかではないことがそこにありました。『本当にあるんだ』と。そのすごさですよね。赤川さんにお話しを聞いたときも、軽くしゃべっているのですが、本物のすごさがありました。実際に手紙を書かれて送られている方たちにとって、あの場所は、自分が手紙を書いている相手のいる場所だとの感覚があるというのが、すごく腑に落ちました」

『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3・11をたずねて』より
――赤川さんもそうですし、壮絶な体験をした陸前高田の役所の方ですとか、インタビュアーの側に立って質問するのは大変だったのでは。
升「立ち入った質問は一切できなかったです。聞いて受け止めて、うなずいて。あの役所の方のお話しを聞いたときにはもう……」
――どう反応したらいいのか。
升「何もできなくて。ただ、時間が経ったことで、悲しみを抑えてすっと言葉を出してくださるあの方の強さにクラっときました」