「あんた、ホレ、大学3年の夏に泊まりがけで奈良に行ったじゃない? 帰ってから写真見せてくれて、一緒に行ったガールフレンドを自慢してたの、母さん覚えてるわ」と大学時代の元カノの話題になりました。
「私が付き合う一個前の彼女の話を、お義母さんがしだしたんです。いくら昔のこととは言え、いい気はしなかったので、うつむいていました」
「
確か、一つ下のテニスサークルで知り合ったサラサラ髪の目のクリっとした女の子、母さんよく覚えてるわ~」と義理母。
悪気があってこの話をしているわけではないのでしょうが、それでも、段々と場が凍りついていきます。妹夫婦も気まずそうに曖昧に返事をしていました。
「いい加減にしろよ!」とT夫さんはいきなり怒鳴り声を上げました。そして、まだ野菜などの具材が残っていた盆を畳に放り投げました。
「
Y美が嫌な顔してるのが分かんないのかよ、気ぃ悪いわ」
T夫さんは立ち上がって、コンビニに行ってしまいました。Y美さんは「お義母さん、大丈夫ですか?」と気を配りながら、床に落ちた残骸を片付けていました。びっくりしてしょげた様子の義母さんを不憫に思ったそうでしたが、アルコールもだいぶ回っていたためなのか、しばらくすると機嫌が元通り。
Y美さんを思うT夫さんの気持ちも分からなくはありませんが、それにしても食べ物を畳に投げ捨てるほどのことなのか、どうしても気になってしまうところです。