問診と触診次第で効果が出やすい場所へ打つことになりますが、最初はまず自身で痛みを感じているところに打ち、効果を実感することがおすすめとのこと。ということで、一番気になる左肩に打ってもらうことに。 注射は超音波診断装置のモニターに映された映像を見ながら打ちます。超音波で確認することで、筋膜と筋肉の間に正確に打つことができるそうです。 打つ量はたったの10cc。打ってから抜くまでの時間はほんの30秒程度とのこと。その短い時間を耐え抜けば、肩こりからの解放感が味わえるはず。そう言い聞かせて、高まる緊張を抑えて超音波装置の前に座ります。 そしていよいよ注射です。針周辺の肉が内側に向かって潰される感覚は間違いなく痛みです。しかし注射が苦手な私でも、おとなしくしていられる程度。 思っていたほどの痛みがなく、ホッとしたのも束の間、数秒後に肩の内側から痛みが広がり、思わず声をあげてしまいました！ 痛みに驚いてモニターに目を向ければ、筋膜と筋肉の間が生理食塩水によって、しっかりと押し広げられているじゃありませんか……！ SF映画にあるような、知らぬ間にエリイアンに寄生されていて、内側から食い破られている瞬間は、きっとこのような痛みがあるはずっ！ 体をよじったり、涙を流したりするほどの痛みではありませんが、初めて体験する種類の痛みに全神経が左肩に集中するのを感じます。 ちなみに同席していた「女子SPA！」編集長も筆者とほぼ同じ症状で、同じ個所に打ったはずなのですが、「ちょっと痛い」とコメント。え……？ 私が大げさなのかな?? 痛みの表れ方や感じ方には、どうやら個人差があるようです。 なお打った当日の運動は問題ありませんが、血流が良くなっているので、飲酒は控えたほうがいいかもしれないとのことでした。 打ち終わった直後は余韻の痛みと重さはありますが、剥（は）がれている最中のような痛みはありません。打った箇所は生理食塩水が入っているため、ぷにぷにとした感触。しかし15分後に再度触れてみたところ、ほぼなだらかな状態に。 効果を確かめるために肩を回したところ、可動域が広がっていました！ 左肩の突っ張りが取れた分、首も右に向かって倒すほうが楽なのは明らかです。 漫画でよく見るやつですよ。謎の老人に体を無理矢理ボキボキと曲げられて、痛みに文句を言おうと思って立ち上がったら、痛みが取れている、みたいな。何が起こったか把握できない不思議な体験をしたときの感覚に近いですね。 打つ前は「痛みをとるのに痛い思いをするのはおかしい」と文句を垂れていましたが、痛い思いをした分、効果てきめんでした。 恐ろしいことに効果を得られても、姿勢が悪いと3、4日で効果が実感できなくなるとか。効果を継続して実感したかったら、姿勢を正すことを意識する必要があります。 指が入りやすくなるので、生体の施術やマッサージもより効果得やすくなるそうで、筋膜リリース注射と併用するのが先生のおすすめです。 「かなり強い首肩の痛みでも、2週に1回くらいの頻度の注射を3回打てば相当な改善を感じていただけます」 とのこと。私もお財布と相談しつつ、通うことを検討してみようと思います。 【南雲吉祥（なぐもよしあき）】 ナグモクリニック東京理事長。整形外科専門医。医学博士。がん治療を専門にしてきたが、自身のケガを契機にスポーツ診療に転身。アメリカでの再生医療研究の経験を生かし、2020年より乳腺専門のナグモクリニック東京に、新しく整形外科・再生医療部を設立。乳がん患者様への運動器診療と並行し、アスリート診療を行う。 ＜文／増田洋子＞