話も早々に切り上げると霊媒師はおおぬさを友里さんの頭の上で大きく振りながら呪文を唱え始めたそうです。

「
娘さんには整理整頓をはばむ良くない霊がついているようです。今から除霊を行います」
ブツブツ言いながら10分ほど時間が過ぎて霊媒師はおもむろに、追加の呪文を唱えたそうです。
「除霊が終わったことを告げた霊媒師、今度は“透視”じみた口調で話し始めたんです。ただ、その“透視”の内容は、母親への事前ヒアリングで聞き出した基本的な私の情報でした」
そうとは知らない母親は、とても真剣な表情で霊媒師の話に耳を傾けていたそうです。
霊媒師はおおぬさをさらに大きく振りながら、呪文らしき言葉を断続的に口にしながら友里さんを鋭く見つめ、最後に右足を床に叩きつけました。

「
原因は同僚の女性にありそうです。その方に強い生霊が憑依していますから距離を置いてください」
霊媒師は絞るような声でそう告げました。
その言葉を耳にした友里さんは、霊媒師がインチキであることを確信しました。なぜなら、友里さんの職場にはここ数年女性スタッフはおらず、彼女が紅一点だったからです。
「
私の職場、女性は私一人なんですけど」
友里さんは低めのトーンで一言ゆっくりと呟いたそうです。
その言葉を耳にした霊媒師はあからさまに目を泳がせ「あ、過去にいらした方…ですね」と言い直しますが、すでに後の祭り。友里さんと母親の無言の視線に耐えかねたのか「本日は特別にお祓いの料金は結構です」と、お祓い道具をカバンにしまってそそくさと帰っていったそうです。