
その後、彼女はテラスやプール、スパ、と移動しながら自由に過ごしています。一方の彼はスーツを着てラウンジでオンライン会議に参加。時折、私から水やコーヒーを差し出すことはあっても、朝の言い争いを見てしまったせいで目を合わせられず、なんとなくやりにくい雰囲気が漂います。
正午になって男性が全てを支払い、事実上のチェックアウトを済ませてからもスパにとどまったこの2人。ジャグジーを使用することもなく、ビーチチェアに寝転がって本を読んだりスマホを操作したり、思い思いに過ごしています。
そんな折、ふと気づくと、ラウンジに2台あるはずのワイヤレス式ポータブルスピーカーが1台ないではありませんか。「えっ盗まれた!?探さなきゃ…」と思ったのも束の間、流れていたリラックス系のジャズが止まると、いきなりハスキーな女性の歌声が聞こえてきました。
ラウンジに流れ出した失恋ソング『あなたを待っているわ』
「あなたがこの列車に乗っていたらいいのにって願ってしまう。もし乗っていなくても私は待っているから~」
イタリアの女性シンガー、アレッサンドラ・アモローゾの失恋ソング、Ti aspetto『あなたを待っているわ』が、誰かのスマホから勝手にブルートゥース接続され、ヴィラのスピーカーから流れ始めたのです。
果たして、女性からのこのさりげないメッセージは男性に届いているのでしょうか。今となっては知る由もありませんが。