『鎌倉殿の13人』でも、小栗のバランス力は遺憾なく発揮されています。
源頼朝を演じた大泉洋をはじめ、坂東彌十郎、佐藤浩市、宮沢りえ…と豪華な実力派・個性派の俳優が多く登場してきた本作。描かれている時代背景もあり、毎話のように登場人物が亡くなったり、失脚したりします。物語から消えていく人々は皆とても魅力的に映り、その人がいなくなる回は、それぞれに話題となりました。

『NHK2022年 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」完全読本』NIKKO MOOK(産経新聞出版)
その話題性は、主演の小栗を上回っていました。しかしこれは、主人公である小栗が共演者をよく観察し、彼らの呼吸に合わせて演じていたからこそではないでしょうか。三谷幸喜の脚本力・個々の役者の力量ももちろん前提にあるものの、小栗の「受けの演技」により各登場人物に一層光が当たり、より輝いていたのだと思います。
そんな小栗の観察力の高さは、10月9日に放送されたNHK特番「『鎌倉殿の13人』応援感謝!ウラ話トークSP~そしてクライマックスへ~」でも明かされました。大泉洋演じる頼朝の“代役”を、急きょ演じた回があるというのです。いそいそと階段を上るその後ろ姿は、大泉の歩き方の癖を見抜いて表現しており、大泉本人すら別人と気づかなかったとか。そんなエピソードからも、小栗の高い観察力と表現力が伺えました。