山﨑賢人『ゴールデンカムイ』主演内定に原作ファンから不満の声。肯定派が伝えたい“実写化王子”の才能
野田サトルによる人気漫画『ゴールデンカムイ』の実写化が決まり、先日10月19日にいよいよ主演俳優に山﨑賢人が内定したことが一部メディアで報じられた。それを受け、ネット上ではおおかた批判的な意見があふれる中、筆者は、このキャスティングを好意的に捉えたいと思う。
だいたいにおいて現在の日本映画界で、興行成績も含め、いったい誰が実写化の大役を期待どおりに演じ切ることができるだろうか?
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、あくまで肯定派の意見として、今回のキャスティングの是非を問いながら、山﨑賢人にとっての“黄金期”をみつめてみたい。
『ゴールデンカムイ』の主人公・杉元佐一は、元大日本帝国陸軍の兵士で、驚くべき戦闘力を発揮する強者だ。あの驚くべき6パックの筋骨隆々を体現するには、確かに山﨑の身体の線は細く、不相応かもしれない。
明治末の北海道を舞台にした漫画内の2次元世界を飛びだして、風格ある元軍人の勇姿を映画の3次元空間で表現できるかについては、正直なところ、不安がないわけではない。
一方、山﨑があらわにする肉体の美しさを期待する声もある。『水球ヤンキース』(2014年、フジテレビ系)では、しなやかな身体と瞬発力が目を見張るものがあったし、たとえ筋骨隆々ではないにしても、なかなか美しく、艶(つや)やかな姿で水球チームの要として全編を躍動していた。
これはあくまで山﨑ファン目線による淡い期待というか、贔屓目だと捉えられるに違いない。事実、筆者は山﨑賢人の大ファンである。だから、もちろん『ゴールデンカムイ』の実写化作品の主演が決まったことをそりゃ好意的に受けとめている。
ただ、実写化俳優としての山﨑のこれまでの歩みと躍進を振り返るなら、彼以上に実写化作品の完成度に貢献してきた才能が他にはみつからないこともまた事実なのだ。
と、あれやこれや意見はたくさんあるが、筆者からすると今や山﨑賢人は、実写化俳優のスタンダードだと言い切りたい。スタンダードという言葉は、映画でも音楽でも長く語り継がれる名作を意味するが、実写化作品の文脈では山﨑以上にスタンダードな存在はいないからだ。今でこそ、彼は幅広い作品に出演するようになったが、日本映画界が空前の実写化ラッシュに湧いていた2010年代は、日本映画界自体が山﨑賢人の歩みとともにあった。
あの当時、少女漫画を原作とした実写化映画に片っ端から出演していた山﨑をスクリーン上にみない年はなかった。いわゆるきらきら映画の金字塔として筆者が偏愛している『オオカミ少女と黒王子』(2016年)を頂点として、山﨑が“実写化王子”の異名を取っていたことが、懐かしくもあり、またそれは山﨑のキャリアの“黄金期”を物語っていた。
山﨑賢人なくして、日本映画はない。これは言い過ぎではないだろう。山﨑は、『オオカミ王子と黒王子』が公開された2016年前後を第一期の黄金期としながら、『氷菓』(2017年)以降、漫画原作作品と小説原作作品を2作品ずつ一定のペースで映画に主演するようになる。原泰久による原作の実写化作品『キングダム』(2019年)では、実写化王子というより、もはや“実写化の化身”としての意気地を多くの映画ファンに印象づけた。
山﨑ファン目線による淡い期待
実写化ラッシュに湧いていた2010年代
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