何もしないときの佇まいや顔が、菅原に成り代わっていた
――改めて映画での藤ヶ谷さんの菅原はいかがでしたか?

『そして僕は途方に暮れる』より
三浦監督「クランクインして3~4日経ったくらいには、もうほとんど菅原になってましたね。細かい見え方などについては指示しましたけど、感情的な部分に関してはもう大丈夫だと思いました。
顕著だったのが、セリフを言っているときよりも、何もしないときの佇まいや顔です。そこがもう藤ヶ谷くんじゃなくて、菅原に成り代わっていると感じました」
――特に印象的だったシーンを教えてください。
三浦監督「
強烈だったのは、後半の実家での土下座シーンです。あそこは本来ああしたシーンではなくて、もっと間抜けな感じで謝るイメージだったんです。そこを、藤ヶ谷くんが思いを込めて演じてくださった。僕の構想としては、もっとどうしようもない感じで、それを見ている家族たちもどうリアクションしていいのか分からないといったシーンでした。でも、撮影自体もう後半だったのですが、完全に菅原になっている藤ヶ谷くんの芝居を見て、『いいな』と。それでそのまま使いました。僕の意図とは、いい意味で外れたシーンになりました」
――豊川悦司さんの演じた父親とのシーンもすごく良かったです。

『そして僕は途方に暮れる』より
三浦監督「結局、菅原の逃げ癖ってお父さんから受け継がれているので。これだけの役者さんに出ていただくわけですから、映画のラスボス(笑)として居て欲しいと思いましたし、それが豊川さんならやってくださると思いました。豊川さんはとにかくカッコいいんですが、それをみっともなく見せたいという思いもありました。脚本を本当によく読んでくださって、この作品の中で描こうとしているダメさとか抜けた感じを理解して演じてくださいました。実際にご一緒してみて、やっぱり素敵な俳優さんでしたね」
――本編の出来上がりを、豊川さんも「
楽しみにしている」とコメントされてました。
三浦監督「あれ読んで、めっちゃ怖くなりましたけど(笑)。いや、ありがたいお言葉です」