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NHK『大奥』、風間俊介演じる“種なし”が見せてくれた「最も理想的な死」

“もっとも理想的な死”を見せてくれた最終話

“もっとも理想的な死”を見せてくれた最終話

(C)NHK

 では第1シーズンの最終回では何が強く描かれたのか。杉下(風間俊介)の死だ。種なしという、大奥においては存在そのものが揺るがされる身でありながら、杉下は吉宗に「めおとじゃ」と言われ、手厚い介護を受け、家重(三浦透子)に「父上」と、家治には「じじさま」と呼ばれ、家臣たちからも最後まで慕われた。自分の遺伝子は残せなかった杉下が、家族に囲まれ、本作においてもっとも理想的な形での臨終を迎えたのである。この場面を、このドラマ『大奥』は、たっぷりと時間をかけて描き、「家族」の形に希望の光を当てた。
もっとも理想的な形での臨終を迎えた

(C)NHK

 また、片岡愛之助が演じた藤波は、原作とはかなり印象の異なる愛すべき人物となり、ふたたびの登場が嬉しいサプライズとなったが、そこには、愛之助が自身の屋号である松嶋屋の大スター、片岡仁左衛門を強烈に推すというコミカルなシーンを演じた楽しさだけでなく、こうした空気を循環させる役割をもたらす人物を演じた愛之助自身が、歌舞伎界へ一般家庭から入り人気役者となった人だという点も、非常に効いたキャスティングだった。

期待値がガン!と上がった第2シーズン

「まこと大御所様は、偉大な将軍であられたことでございます」とされた吉宗公だったが、問題は持ち越しとなった。第2シーズンの放送は秋だが、渋谷に立つ冨永の姿からも、それは私たち自身の課題として託されることに。と、難しく考えることもできるが、そんなことは取っ払い、ため息ができるほど美しい衣装や、素晴らしい美術や照明、映像に演出、全員がピシャリとはまったキャスティングに、たただた楽しませてもらえるシーズンであり、素直に、幾度も泣かされた。確実に第2シーズンへの期待値がガン!と上がったが、きっとそれも楽々と超えてくれるはずだ。 <文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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