「彼が点数シートを出してきて、基準ごとに0から10の評価で点数の書き込みをするようにお願いされました。その基準もかなり細かくて、抑揚や声のトーン、滑舌やアクセントに声量とか……こんな素人の私が点数を付けるような内容ではなく……」 　健二さんの声の稽古はさらに続きます。 「よく分からないまま、なんとか点数を付けて彼に渡すと、今度は一緒に観た映画の台本のようなものを出してきました。なんと、そこには私が読み上げる箇所が分かるようにマーカーが引いてあったんですよ」 　声優志望の彼を選んだとはいえ、2回目のデートでこんな展開になるとは思ってもいなかったそう。 　仕方がなく、彼から受け取った台本の台詞を読む雅美さんでしたが……。 「その内、彼は私の台詞の読み方を指摘してくるようになりました。『そこはもっと抑揚をつけて』『こっちは悲しいけど温かい心で』とか、それも、結構強めな口調で言ってきて。 　私はなんだか彼に洗脳されているような感覚になりながらも、早くこの時間が終わらないかなと、フワフワとした頭の中で思っていましたね。あの公園での時間は、ものすごく長かったです」 　もともと目立つのが好きではない雅美さんにとって、公園でひと目に晒されての稽古は相当つらい時間だったようです。 　それ以来、雅美さんは「彼とは付き合えない」と思い、彼と会うのをやめました。しかし、一途に夢を追い求める健二さんには夢を掴んで欲しいと思っているそう。 　夢を追う姿を、陰で支えるくらいの距離感で付き合える相手を、雅美さんは今も探しています。 【他のエピソードを読む】⇒「実録！私の人生、泣き笑い」の一覧へ 【あなたの体験談を募集しています！】⇒心がほっこりした「ちょっといい話」、ありえない！「びっくりした話」「ムカついた話」、人生最悪の恋愛を募集中！（採用時に謝礼あり）ご応募はここをクリック ＜取材・文／maki　イラスト／ズズズ@zzz_illust＞