
写真提供:NHK
そんな志尊演じる竹雄の魅力が炸裂したのが、2023年4月20日に放送された第3週「ジョウロウホトトギス」(16回)のこと。
酒の品評会に参加するため上京した万太郎は、本来の目的である博物館を訪問。小学生の頃から敬愛している学者たちに会うことができ、満面の笑顔で博物館を後にした。
一方で、その姿を見た竹雄は複雑な気持ちに。あくまで、万太郎は酒蔵「峰屋」の当主。それなのに、いつだって植物のことしか頭にない。お目付け役としてはもちろんのこと、万太郎の友人としても、不安で寂しい気持ちを隠せない竹雄の心境がまざまざと伝わってくる回だった。
志尊淳は、不安を表現するのが上手い。
幽霊が見える青年・三角康介役を演じた映画『さんかく窓の外側は夜』(2021/岡田将生とのW主演)では、そのことが顕著に現れている。瞳の奥に揺れる不安、恐怖、寂しさ。見ている側が、思わず画面内に引き込まれてしまうほど、ネガティブな感情も美しく見せてくれたのだ。
『らんまん』では、佐久間由衣演じる綾(万太郎の姉)に密かな恋心を寄せてもいる竹雄。万太郎の自由奔放さに振り回され、綾への気持ちも御しきれない、バランスを崩したやじろべえのような役柄を、今後どのように見せてくれるのだろうか。
現在『らんまん』に出演している以外、ドラマや映画の公開待機作は発表されていない志尊。
過去に急性心筋炎で休養していることからも、体調との折り合いをつけながら、良作との縁を結び続けてほしいと願うファンは多いはず。しばらくは、初々しい竹雄の演技を見届けたい。
<文/北村有>
北村有
葬儀業界を経て2018年からフリーランス。映画やドラマなどエンタメジャンルを中心に、コラムや取材記事を執筆。菅田将暉が好き。