そして明子さんの母親は、参列していたある女性の前で止まります。
「後から親戚に聞いた話なんですが、その女性はかつて父と婚姻関係にあったいわゆる父の前妻だったそうです。
私は、父に離婚経験がある事をそれまで知らなかったので……。あの時は、本当に何が起きているのか、まったく分かりませんでした」
明子さんの母親は、声を震わせながら女性に「あなた、よくここに来れたわね。散々、哲也さんに苦労かけておいて」と言ったそうです。
すると女性は「最後に一目でいいからお願い! てっちゃんの顔が見たいの、お願い」と母に頼むように言います。
しかし、この前妻の願いを母は拒否。そして、顔を真っ赤にして「もう、いい加減にして! 哲也さんは5年も病気と闘ってきたの。哲也さんは私だけの夫なの」と叫びました。

前妻も「私のてっちゃんはあなたのものじゃないわ」と負けじと大声で叫んだかと思うと、2人は取っ組み合いに。
「あの時の喧嘩は酷いものでしたね。喪服は乱れるは、髪はぐちゃぐちゃだわで……結局、事情を知っている親族が止めに入ってくれて、母は葬儀に戻り、前妻は親族と話をした後帰っていきました」
ものすごい剣幕で取っ組み合いをした前妻と後妻ですが、明子さんは今でもそのとき母が前妻に放った一言が忘れられないそう。
「母が、『哲也さんと同じお墓に入るのは私なの。他人のあなたとは違うの』と最後に前妻に言ったんです。その言葉を聞いた途端、前妻の勢いが少しおさまった気がして……。同じお墓に入るって重い言葉なんだなと感じましたね」