誠実キャラかお調子者か。町田が演じる役柄は、基本的にこのふたつに分類される。
『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系、2020年、以下、『チェリまほ』)で演じた黒沢優一役は、誠実キャラが板についた熱演だったし、軽妙さ満載の『unknown』(テレビ朝日系、毎週火曜日よる9時放送)の加賀美圭介役も好演が光る。
どちらのキャラクターを演じても、計り知れない魅力がある町田だが、でもそれを遥かに上回るのが、『ドラフトキング』での名演なのだとすると。誠実と軽妙のちょうど間、非常にバランスの取れた地点に、この役の真髄がある。
この先、どんな役柄を演じていくべきなのか。『テッパチ!!』(フジテレビ系、2022年)でゴールデン連ドラ初主演を経て、きっとそんなふうに考えていたタイミングだったのではないだろうか。
そこへ阿比留役きたり。役柄が持つちょうどよさを絶妙なテンポ感で演じることで、あの素晴らしい脱力の演技が表出したのだ。
作風も役柄もまるで違うが、同じWOWOW製作のドラマ『フィクサー』は、政治物だけに物々しい雰囲気漂う。毎朝新聞政治部の記者である渡辺達哉(町田啓太)が、冒頭から作品全体のナレーションを担い、うごめく悪漢どもを客観的に俯瞰する重要な役割。
こころなしか、町田のナレーションに力が入るのがわかる。『チェリまほ』では、黒沢役の心模様をふるわせる見事なモノローグが素晴らしく、繊細な感性に磨きをかけた。
売れない漫画家が、毎回旬のトピックを早口解説する『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』では、トーク術が鍛えられてもいる。ナレーション、モノローグ、トーク。作品に合わせた声の演じ分けで三拍子揃っているというわけだ。