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まるで“WOWOWドラマの申し子”な注目俳優とは?「徹底して脱力した演技」の魅力

WOWOWドラマの“申し子”か

 本作は、政界のフィクサーこと設楽拳一(唐沢寿明)が、出所する場面からはじまる。直後、総理大臣・殿村茂(永島敏行)を乗せた車両が事故にあう。何者かが仕組んだことか。設楽の密かな調査とともに物語は、ゆっくりと静かに離陸する。  設楽が目をつけ、コンタクトを取るのが達哉だ。特ダネをつかむため、匿名のメールに返信する達哉自身の中でも、ふつふつと、なにかが動き始めている。カツサンドをほお張る町田の演技が、じわじわと尾を引く。  かぶりつく町田君の口元のアップもすごい。これはもしや『ドラフトキング』超えの名演が、繰り出すということなのか。  設楽のことを調べようと、ある夜、達哉は、パソコンに向かう。ここで、町田の横顔が、なにかおかしいと気づきはしないか。  いや一見、なんてことはないし、ほんのわずかな誤差みたいなものかもしれない。でも今まで見たことがない町田君が、そこには確かにいたような気がした。  匿名メールの件名が、ダンテの『神曲』に由来するのも効果的で、町田啓太とルネサンス最大の詩人がこうしてリンクする驚きがある。『神曲』に登場する永遠の恋人たち、パオロとフランチェスカのパオロの麗しき横顔は、不思議と町田のそれに酷似している。  メールの差出人であるK(その正体は、もちろん設楽)と接触を図ろうとし、待ちぼうけになった達哉が、「危ない場所へ足を踏み入れようとしている自覚はあった」と言う場面は、真に迫る表情だ。  まるで、WOWOWドラマの“申し子”か。今、間違いなく、町田啓太に大きな化学変化が生じようとしている。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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